Bruce Perens氏は6月19日、都内で開かれたVA Linux Business Forum 2003において基調講演を行った。Perens氏はオープンソースの提唱者の1人で、Debian GNU/Linuxの生みの親であり、オープンソースの定義を初めて述べた人物として知られる。講演はソフトウェア特許の問題やSCOの訴訟問題、日本政府のオープンソース利用など多岐にわたる内容となった。
Perens氏はまずオープンソースの利点について、自社で開発内容をコントロールできること、開発状況が把握できること、費用対効果が高いことを挙げる。特に費用対効果については、パッケージで売られるソフトウェアの場合、価格の約90%が製品の梱包や運送、広告など開発以外のものにかかっていると指摘し、「オープンソースであればほぼすべての費用を開発に回せる。そこで浮いた資金は自社の宣伝や会社の利益に当てることができる」(Perens氏)とメリットを強調した。
ただしPerens氏は、オープンソースが全てだと言うわけでもないようだ。「オープンソースはユーザーに選択肢を与えるもの」とPerens氏は話しており、あくまでもオープンソースとプロプライエタリなソフトウェアの両者が対等に競争できる環境こそが重要だとした。
ソフトウェア特許がオープンソースの脅威に
Bruce Perens氏 | |
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Perens氏が危機感をあらわにしたのが、ソフトウェアの特許の問題だ。「オープンソースは裁判のための予算などとっていない。裁判の答弁のためには約100万ドルが必要だ。そうなると、どんな条件であっても和解するしかなくなる」(Perens氏)
特に、業界標準となるソフトウェアにも特許が含まれてしまうことにPerens氏は意義を唱える。「中小企業ではとても特許料を支払うことはできない。結局クロスライセンスによって特許を利用できる大企業しかソフトウェアが使えなくなる。業界標準のものは特許料を払わなくてもいいという制度が必要だ」(Perens氏)
またPerens氏は米国の特許認定の方法についても触れ、「特許審査官は特許を何件認可したかで給料が決まる。そのためきちんとした審議が行われず、結局裁判で特許の問題が決まってしまう」と制度のあり方にも疑問を唱えた。
日本にもEric Raymondのような伝道師が必要
会場からは日本政府のオープンソース利用について、現場はどうしたらいいかわからず困っているというコメントが出た。Perens氏は政府のオープンソースに対する理解不足が原因だと指摘。その上で「日本にもEric Raymondのようなオープンソースの伝道師が現れるべきだ」(Perens氏)として、政府とオープンソースをつなぐ橋渡し役が必要との見解を示した。
日本になかなかオープンソースの伝道師が現れないのは、日本の文化が原因ではないかとPerens氏は推測する。「米国と違って日本では言いたいことをはっきりと言ったり、自分の信じる道を突き進むことが受け入れられないところがある。もっと大きな声を上げることが必要だ」(Perens氏)と話し、日本の技術者にも「思うことがあったら、ニュースサイトや雑誌、本などに投稿してみたらいい」とマスコミを利用することを勧めた。
「SCOの戦略は大成功」
Perens氏はSCOが同社の持つUnix特許にIBMが違反していると訴訟した件についても自ら口を開き、「裁判にはならないだろう」と予測する。SCOはMicrosoftの独占禁止法訴訟で米司法省の弁護を務めたDavid Boies氏を弁護士に雇っているが、「優秀な弁護士は負けを予感すると、裁判に持ち込まないようにする」(Perens氏)というのがその理由だ。ただ、この訴訟によってSCOの株価が急上昇したことから、Perens氏は「SCOの戦略は大成功だ」と皮肉混じりに述べた。
さらにMicrosoftがSCOからUnixのライセンスを受けたことについても、「Unixとの互換性をWindowsにもたせるのが狙いだろう。ライセンス料は『わいろ』だ。MicrosoftがLinuxを直接非難しても誰も信じないが、SCOがLinuxの評判を落とすようなことをしてくれたので喜んでいる」と厳しくコメントした。
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