オラクルが敵対買収宣言:ピープルソフトを51億ドルで

 米Oracleは6月6日(米国時間)、エンタープライズソフトウェアメーカーの米PeopleSoftを総額51億ドルに上る株式公開買付けで買収すると発表。PeopleSoftが、競合するJ.D Edwardsを17億ドルで買収すると明らかにした僅か数日後の突然の発表は、多くの関係者を驚かせており、さまざまな観測が飛び交っている。

 Oracleは、6月9日月曜日(米国時間)より株式の公開買付けに着手すること、また大手投資銀行のCredit Suisse First Bostonから買収に関するアドバイスを受けており、同行が買収用のつなぎ融資も提供することを明らかにした。なお、Oracleの手許には約60億ドルの現金がある。

 PeopleSoftのCEO(最高経営責任者)Craig Conwayは、今回の買い付け申し入れについて、「非常に残忍な行為を繰り返してきた会社による、極悪非道な行為であり、PeopleSoftが先週初めに発表したJ.D Edwards買収を混乱させようとする、露骨な試みであることは明らか」と声明のなかで述べている。

 さらにこの声明には、「PeopleSoftと同社の取締役会には、意図に如何にかかわらず、すべての現金による買い付けを審査し、株主に対して速やかに明確な勧告を行う法的義務がある。同時に、PeopleSoftは株主に対して、すぐには何の行動も取らないようアドバイスする」と付け加えてある。

 Oracleは、PeopleSoftの買収が完了した場合、「J.D Edwards買収を進めるかどうか、また進める場合にはどんな条件とするかについて、慎重に検討する」としている。

 OracleのCEO、Larry Ellisonは「PeopleSoftを買収することで、我が社の収益力および競争力が即座に高まる」と、プレスリリースのなかでコメントしている。

 たとえEllisonの発言が真実であるとしても、現実にはOracleはPeopleSoftからアプリケーションビジネスを奪うのに相当苦戦してきており、これまでのところ限られた成功例しかない。つい先日までは、Microsoftを仇敵と見なして激しく攻撃していたEllisonが、Microsoftよりかなり格下の競争相手に照準を定めたことは、それだけ同社のビジネスが苦境に立たされていることを物語っているとも受け取れ る。

 Ellisonは、買収が完了した場合、OracleにPeopleSoftを独立したブランドとして存続させる意志がないことを明言した。「新規の顧客に対して、PeopleSoft製品を積極的に販売することはないが、同社の全製品に対するサポートは強化する。その上で、PeopleSoft製品が搭載している高度な機能を、Oracle eBusiness Suiteの将来のバージョンに搭載していく」(Ellison)

 Ellisonは電話会議の中で、1年ほど前に、PeopleSoftのComwayのほうからアプローチしてきたと説明。「PeopleSoft、Oracleそれぞれが展開するアプリケーションビジネスをひとつにしないかと持ちかけてきた。ただし、その時には、どういう取引にするかについて、そのストラクチャの点で合意が得られなかった」(Ellison)

 しかし、PeopleSoftの広報担当者は、Ellisonの説明が真実でないと反論している。

オラクル
企業プロフィール
ビジネス:企業のセールス部門、購買部門、サプライチェーン、製造部門、人事向けの、データベースとアプリケーションソフトの開発。  
会長兼CEO:Larry Ellison 
CFO:Jeff Henley 
従業員数:4万2000人 
売上高:94億ドル 
EBITDA:38億ドル 
時価総額:700億ドル 

 「PeopleSoftを売却したり、両社を合併するといった話は、一度もしていない。実際には、Oracleにアプリケーションビジネスから撤退し、そのビジネスを我が社に売却しないか、といった話をしたのだ」とPeopleSoftの広報担当者は述べた。

 同担当者はさらに、金曜日の朝、OracleがPeopleSoftの取締役会に宛てて、買収申し入れのファックスを送りつけてきたが、それはOracleがすでにこの買収計画についてプレスリリースを出した後だったことを明らかにした。

 今回の発表に先立って、業界アナリストたちは、PeoplesoftとJ.D. Edwardsの合併案が、Oracle、そしてエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)ソフト市場で先頭を走る独SAPにとって、大きな競争圧力になるであろうと述べていた。

ピープルソフト
企業プロフィール
ビジネス:CRM、人事管理、財務管理、サプライチェーン管 理用ソフトウェアの開発  
会長David Duffield 
CEO:Craig Conway 
従業員数:8100人 
売上高:19億ドル 
EBITDA:3億5000万ドル 
時価総額:48億ドル 

 市場調査会社GartnerのアナリストであるTed Kempfは、Oracleの買収提案は、実質的にPeoplesoft製品への需要を凍結させてしまう可能性を指摘している。

 データベースソフト分野で先頭に立つOracleは、これまで何年にもわたって、アプリケーションソフト・ビジネスを成長させようとこの分野に力を入れてきたが、努力の甲斐もなく、依然として収益の大部分をデータベースソフトに頼っている。

 Oracleは世界No.2のソフトウェアメーカーで、2002年度の売上は97億ドル。いっぽう、PeoplesoftとJ.D.Edwardsとの合併で誕生する会社では、年商28億ドルを予想している。

 アナリストのKempfは、すでにかなり不安定なエンタープライズソフトウェアビジネスの市場が、今回の発表でさらに流動的になるとコメント。「市場には、ますます多くの恐怖、不安そして疑念が渦巻くことになるだろう」(Kempf])

 Oracleによる今回の発表、そしてこれに先立つPeopleSoftとJ.D. Edwardsとの合併発表で、普段はあまり動きのないエンタープライズソフトウェアマーケットで企業統合の突風が吹き荒れることになった。3日火曜日(米国時間)には、 Invensysが、財務面でトラブルに陥っているBaan部門を投資家グループに売却。同グループはBaanを、製造業向けに特化したエンタープライズソフトウェアを開発するSSA Global Technologiesと合併させると発表している。

 コーポレートカルチャーの点では、OracleとPeopleSoftほど、正反対の組み合わせもないだろうと指摘する元社員もいる。Oracleは、激しい競争のなかで勝ち残るようなアグレッシブなタイプの人間にとっては、天国ともいえる場所で、セールススタッフに発破をかけるために、四半期ごとに開かれるミーティングの際には、個人の進捗度を記したグラフを壁に張り出す。競争を奨励するこうした雰囲気が、頻繁に行われる組織再編にもつながっている。

 対照的に、Cornell大学OBのDave DuffieldがつくったPeoplesoftのほうには、かつてのHewlett Packardによく似た、協調性と親密さを重んじる社風があり、セールススタッフが契約を取りまとめる際に、他の既存顧客からの推薦を利用することも珍しくないという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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