電子商取引と企業内システムに焦点をあてたイベント、eEnterprise Tokyo 2003が6月4日、東京青山にて開催された。同イベントは、ICe Tokyo(Internet Commerce Expo/Tokyo)とXML World Conferenceを拡大発展させたもの。基調講演にはインフォテリア代表取締役社長およびXMLコンソーシアム副会長の平野洋一郎氏が招かれ、「ビジネスコラボレーション時代を実現するXML/Webサービスの現在と未来」というテーマでスピーチを行った。
平野氏はまずXMLとHTMLのコードを並べて見せ、XMLの特徴について説明した。ベンダーやプラットフォームに依存しない点や、テキストのみを使用するといった点はHTMLと同じだが、XMLは「データの意味づけが可能でさまざまな用途に使用できることや、構造化されていてコンピュータが自動処理できるため、データの加工が容易である点がHTMLとは違う」と語った。
このような特徴を持つXMLの採用に適しているのは、BtoB、EAI(Enterprise Application Integration)、電子申請など異なるソフトウェアやシステムを繋ぐ場合や、PC、PDA、携帯など多様な機種に向けてデータを加工したり出力することが必要な場合だ。また、ワープロなどのアプリケーションは技術進化に伴って変化が激しく、互換性がなくなる可能性があるため、長期間ドキュメントを保存しておかなくてはならない場合などにも、XMLは向いているという。実際XMLは、金融、医療、旅行業界など、業種を問わずさまざまな業界で採用されており、結果的にWebサービスにも適したものになるという。
インフォテリア代表取締役社長 平野洋一郎氏 | |
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平野氏は、次にWebサービスについて、「XMLなどの標準的なメッセージ交換方式を利用したサービスで、インターネット越しにソフトウェア部品として連携的に利用する仕掛け」だと述べた。Webサービスの基盤技術としてはXMLのほかにもSOAP、WSDL、UDDIなどがあげられる。このようなWebサービスを採用した場合の効果は、「決められた形式のメッセージ交換によって実行されるので、ソフトウェア部品として利用することが可能であること、インターネット経由でのシステム間連携が可能であること、またベンダーに依存しない分散アプリケーションの構築が可能であること」(平野氏)などがあげられるという。
Webサービスに何を期待するかという日経マーケットアクセスの調査では、「業務処理の自動化を図れる(41.3%)」「インターネット上のシステム連携のための基盤が整備される(36.6%)」「企業間を中心としたネットビジネスの浸透が加速する(34.3%)」「システム間の連携機構の開発が容易になる(29.5%)」といった項目がそれぞれ高い数値を集めている。Webサービスの構築事例も、KDDIの決済代行サービスやヤマト運輸の配送確認、サントリーの協力会社間情報共有システムなど、「アメリカほどではないが増加中」(平野氏)とのことだ。
平野氏は、現在の企業インフラに求められるのは「3つのV」だといい、それは「Velocity(速力)」「Versatility(多様性)」「Visualization(可視化)」だと述べた。XMLを採用することで、システムに多様性を持たせることができ、また開発手法の点から見ても、システムに依存しないデータフォーマットということで、開発期間やコストの削減も実現できるという。「XMLやWebサービスはすでに実用段階に入っており、ウェブを確実に変えつつある。これはビジネスのフレームワークを変化させ、経営のスピード向上にもつながる。つまり、新しい形の企業インフラを構築するための技術だ」(平野氏)
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