Linuxに対する米SCOグループの言い分

 Linuxは、フリーソフトウェアのなかでも最も成功しているOSだが、実はそのなかに他人が所有するコードが含まれているのか?

 米SCO Group(旧Caldera Systems)は確かにそう考えている。同社は 5月14日、およそ1500社にあてて書簡を送付し、「Linuxはわが社の保有するUnix関連の知的所有権やその他の権利を侵害している」と訴え、さらにLinuxのエンドユーザーは「法的責任」を問われる可能性があると警告した。SCOはこの問題を巡ってIBMを訴えている。またMicrosoftは先週、SCOからUnix関連の権利をライセンス取得すると発表した。

 財政面で苦戦の続くSCOが3月に、IBMを相手取って起こした10億ドルの補償を求める訴訟の内容からは、仮に同社がLinuxユーザーもしくはディストリビュータに対して法的措置を取った場合にどんな主張を行うかが垣間見える。

  • SCOの言い分では、自社のUnixベースのOSであるAIXの一部をオープンソースコミュニティに提供しようというIBMの決定は違法である。なぜなら、AIXのなかには、SCOの保有するUnixに関する機密かつ独自の部分が含まれているから。
  • 直裁には述べていないがSCOは、自社のOpenServer Shared Librariesの一部が、Linuxに組み込まれた可能性を匂わせている。「OpenServer Shared Librariesのソースコードへの無断のアクセスもしくは利用をせずに、まったく同様のものを作り出せる数学的確率はゼロ」(SCO)
  • IBMのLinux開発は「SCOの業務上の秘密を不正流用したもの」とSCOは主張している。これは、もともとAT&TのUnix System LaboratoriesがつくったオリジナルのUnixコードに対する知的所有権を持つSCO Groupから、IBMがライセンス取得した秘密だとしている。SCOとIBMとは、Intelプロセッサ搭載コンピュータ用に新たな64bit OSをつくろうというMonterey プロジェクトを進めていた間に、機密の共同作業を行ったが、2001年5月に両社が袂を分かった際に、IBMは違法に「SCOからの独自情報を自社のビジネスに使用または流用することを選んだ」と、SCOは主張している。
  • SCOがいうには、Linux開発に10億ドルを注ぎ込もうというIBMの意思決定こそ、Linuxをコンピュータ道楽者の遊ぶプラットフォームから、企業がまじめに受け取るOSに変身させた、最大の要因である。そして「高性能を実現するUnixのコード、手法、コンセプトなどを不正流用しなければ、こうしたLinuxの変身は起こりえなかった」ともいう。このほかに、不公平な競争や、契約違反、契約への違法な干渉なども、SCOの告訴理由に挙げられている。

 SCOの主張に対してIBMでは容疑を否認している。なお、SCOの訴えには特許権に関するものは含まれていない。

 この問題について、米法律事務所Carr & Ferrellの弁護士で知的所有権に詳しいJohn Ferrellは19日、Linux OSにはGNU General Public Licenseの下でリリースされた多くのユーティリティが含まれているため、UnixのコードがLinux に流用されている事実をSCOが証明するのは難しいだろうと語った。「著作権侵害訴訟を提起する上での難点は、実際に著作権で保護されているコードへのアクセスがあったことと、問題のコードに実質的な類似性が存在することの2点を立証しなければならない点だ。この2つの事実が証明できて初めて、不正流用が行われたと推定できる」(Ferrell)

 仮にSCOが、Linuxのコードの中で同社のUNIXコードが流用されている部分を特定できたとしても、Linux開発者側でその部分だけ独自のコードに書き換えれば問題は生じない。しかしFerrellは、たとえそのような方策を講じたとしても、依然としてユーザーが過去に行った活動に関して損害を被る可能性は残ると警告する。

 当初SCOは、ユタ州裁判所に告訴したため、著作権に関する主張は一切行われていない(著作権に関する事件は連邦裁判所の管轄)。しかし、その後IBMが同裁判を連邦裁判所に移管したことにより、SCOは訴状内容を著作権侵害に変更できることになった。連邦法の下では、著作権者は故意に侵害した個人/企業を相手に、最大15万ドルの法定賠償金、訴訟費用、弁護士費用を請求できる。

 しかし、この種の訴訟で勝訴するのは容易ではない。1999年に書かれたMarshall McKusickのオープンソースについての著書によると、AT&TはUnixに関する著作権侵害および企業秘密の盗用を理由に、Berkeley Software Designとカリフォルニア大バークレー校を提訴したが、結局Berkeleyが同社のUNIX風OS「Networking Release 2」で使用されている1万8000のファイルのうち3つを削除することで和解が成立した。

 Eric RaymondとRob Landleyが著したオープンソースイニシアティブ側の意見書には、「現在行われているSCO対IBMの訴訟で、SCOに有利な判断が下されれば、オープンソースコミュニティに深刻なダメージを及ぼすだろう。SCOの主張がさらに広い範囲に影響を及ぼせば、Linuxは至る所に知的所有権の問題が隠れる地雷原となり、潜在的なユーザーや味方は先々ずっと、これまで主張されたことのなかった知的所有権を侵害したと訴えられはしないかとビクビクすることになってしまう。そして、実際にコードを書いた人間と最も縁の薄い連中によって、そのコードが自分たちのものであるというというとんでもない権利主張がなされるようになってしまう」と記されている。

 SCOのCEO、Darl McBrideは5月1日に行われたインタビューの中で、同社のソースコードが流用されたとする疑惑についての詳細な言及は避けたが、現在Linuxカーネルのコードの中でUnixWareコードと符合する部分、さらに元々UnixWareコードであったことを隠蔽するために修正を加えて流用されている部分を探していると語った。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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