米Hewlett-Packard(HP)の研究所では、「出張ロボット」に関する研究を進めている。従来のテレビ会議と比べて臨場感をより忠実に再現する同装置の開発は、元米Compaq Computerの研究者が大半をしめるチームが取り組んでいる。
ロボットを利用する場合、まず遠隔地の社員はプロジェクターに囲まれた部屋に着席する。ロボットの液晶(LCD)モニターが会議室の音声と画像を遠隔地に送信し、プロジェクターにその様子が映し出される仕組みだ。ロボットの頭部は複数のフラット・パネル・ディスプレイで構成されており、出席者の顔や表情を表示する。
今回のHPの発表は、絶好のタイミングで行われたといえるだろう。2001年9月の同時多発テロ以降、飛行機で移動する出張を控える傾向が高まる中で、テレビ会議への投資が相次いでいるからだ。さらにこのところのSARS蔓延で、出張がますます減っている。
出張ロボットの目的は、遠隔地の社員が会議の内容を視聴できるのはもちろん、会議室で行われている雑談にも参加できるようにすることだという。遠隔地の社員はジョイスティックを使用して、会議室の一部でやりとりされている会話内容を拾い上げ、会話に参加することができる。ただしロボットに装備されたマイクは感度が高いため、会議出席者は片隅でのヒソヒソ話にも注意する必要があるかもしれない。
多数の機能を搭載する出張ロボットだが、現行モデルはあくまで研究段階であり、「商品化の予定もない」(HP)という。遠隔地の出席者の顔はほぼリアルタイムで映し出されるものの、音声が届くまでには約1秒のタイムラグがあるなど、改良点が多いのも事実だ。
初期モデルでは、ジョイスティックによるロボットの移動が可能で、さらに簡単な作業をこなすためのアーム(腕)が付いていたという。しかしその本体は80年代の映画「ショートサーキット」に出てくるロボットさながらのメタル製だったため、「液晶画面に映し出された会議出席者の顔より、ロボット本体に目を奪われる人が多かった」(機械技師のStan Thomas)。今回のバージョンでは、青色のプラスチックを採用するなど、「より人間に近い外観を心がけた」(Thomas)という。
HPはこの出張ロボットの費用を明らかにしていないが、数回分の航空券より高くつくのは確実だ。現在の設備では、遠隔地で会議室の仮想環境を作り上げるのにパソコン5台、カメラ5台、サラウンドシステム一式を利用しており、ロボットはパソコン2台、複数のカメラ、4方向マイク、スピーカーなどで構成されているからだ。ちなみに、実際の情報のやりとりには、会議室に802.11aの高速ワイヤレスネットワークを導入する必要がある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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