LinuxWorldの2日目となる5月22日、日本IBMは「IBM 1DAYコンファレンス」と題したワークショップを開催し、同社執行役員 基礎研究&エマージングビジネスの岩野和生氏は「オンデマンド時代の次世代ITインフラストラクチャとLinux」と題した講演を行った。
岩野氏はLinuxを利用した同社のグリッドコンピューティングに関する取り組みについて、事例を交えながら紹介した。グリッドコンピューティングとは、様々な場所に分散したサーバやストレージ、周辺機器などをネットワークでつないで一つの仮想組織を実現し、全体として極めて高い演算性能を実現したり、大規模なストレージシステムを構築するための技術。現在はまだ実績が少なく、イントラグリッドと呼ばれる企業内のグリッドシステムが一般的だ。しかし今後は企業間、さらには業界をまたがる形でグリッドシステムが構築されるようになるとIBMでは見ている。ここでは様々な機種が混合するため、「オープン環境しか生きる道はない」(岩野氏)として、Linuxを利用したグリッドコンピューティングシステムを推進している。
日本IBM執行役員 基礎研究&
エマージングビジネスの岩野和生氏
例えばオンライン証券取引企業の米Charles Schwabでは、Linuxを利用したグリッドコンピューティング環境を導入することで、それまで1件あたり4分かかっていた顧客資産管理アプリケーションの処理時間を15秒にまで短縮したという。
IBMはグリッドコンピューティングの標準仕様であるOGSA(Open Grid Services Architecture)の策定に携わるなど、グリッドコンピューティングを積極的に推進しているが、なかなか一般的な理解が浸透していない。この理由について岩野氏に尋ねると、ある秘密を教えてくれた。
「グリッドコンピューティングがあまり理解されていない原因の一つに、具体的な事例がなかなか出てこないことが挙げられる。特に企業に関する事例はほとんど知られていない。これは、グリッドコンピューティングというシステムが今までのビジネスのやり方を完全に変えてしまうほど革新的であるため、競合他社に動向を知られるのを恐れて秘密にしているからだ。我々も、各企業がどんなアプリケーションを利用しているかといったことは、絶対に明かさないでくれと言われている」。岩野氏によると、Charles Schwabのように事例として公表できるケースは稀なのだという。
ただ、「今年後半には、OGSA規格に準拠した製品が出てくるだろう」(岩野氏)と話しており、グリッドの普及はこれからが本番であるとした。
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