砂粒大のRFID(無線認識)タグが、ユーロ紙幣に埋め込まれる可能性が出てきた。共同通信の報道によると、欧州中央銀行(ECB)がRFIDタグの採用に前向きな姿勢を示し、日立との間で契約交渉を始めたという。ECBは、偽造貨幣やマネーロンダリングの対策に本腰を入れており、RFID技術に注目していると見られる。
昨年、ギリシャの当局は2411件の偽造事件を摘発、押収した銀行紙幣は4776枚に及んだ。ポーランドでも、数百万枚のユーロ紙幣を偽造・流通した疑いで犯罪者集団が逮捕されている。
一般企業でも、貨幣の真贋を判別する上で、現行の装置では偽造通貨や識別マークが消えかかった古い紙幣などを見分けることができないでいる。ちなみに、ユーロ紙幣の識別には、紫外線を当てると浮き上がって見える特殊な繊維が利用されている。
調査会社Frost and SullivanのPrianka Chopraは、3月に出されたレポートのなかで、「通貨が本物であることを見極め、偽造を食い止めるのが、RFIDタグ導入の主な目的」と述べている。
「さらに、RFIDタグを埋め込んだ紙幣なら、誰の手に渡ったものかについての詳細な履歴などを記録できる。そのため、資金洗浄や違法な取引を防ぎ、さらには誘拐犯が識別マークのない紙幣を要求することを防ぐことさえ可能になる」とChopra。
RFIDタグは電子透かしとして機能するほか、銀行が紙幣を数える際の負担も軽くなるとのメリットがある。紙幣の束を読み取り機にかければ、瞬く間に合計金額がはじき出される仕組みは、RFIDタグを使った荷物追跡システムと同じだ。
日立がECBとの契約に成功すれば、同社がすでに実現している微小無線チップが使われる可能性がある。同社では今年2月に、わずか3mm四方という世界最小の非接触型チップを使った「μ(ミュー)チップ」の運用に成功したと発表している。このチップは、無線信号に触れると数字128桁の情報を送信できる。ユーロ紙幣の場合には、シリアルコードや発行元情報、額面情報などがやり取りされることも可能だという。また、こうしたデータは、製造時にROMに書き込まれるだけで、「後から書き換えることはできない」と日立では話す。
日立のこの極小チップは、2005年に開催される愛知万博の入場チケットに使われることになっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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