マイクロソフトの代表取締役社長、阿多親市氏が4月23日、新高輪プリンスホテルにて開催中のHP World 2003で基調講演を行った。今回のHP Worldのテーマは「日本の元気を考える」。低迷を続ける日本経済だが、このような状況下でも元気であり続けるマイクロソフトと同社を率いる阿多氏が、まさに元気を与えてくれるような講演であった。
講演の冒頭で阿多氏は、日本の総合競争力の世界順位が10年前の1位から30位に落ちたことを指摘した。これは「ITガバナンスがうまく行っていないからだ」と同氏。ITガバナンスは、単にCIO(最高情報責任者)というポジションを設けることではないと語る。ITガバナンスで重要なのは、「目的をはっきりさせ、そのための手段を確立し、フィードバックを行いつつ目指す方向へ向かう組織能力をつけること」だと阿多氏は述べた。「米国で企業におけるITの位置づけを聞くと、『競争優位獲得の手段』『合理化・効率化の手段』というはっきりとした目的を持っている企業がほとんどだが、日本で同じ質問をすると『どちらかというと競争優位獲得の手段』『どちらかというと合理化の手段』『競争優位獲得と合理化の両方』といったあいまいな答えが90%を占める。このように目的がはっきりしないままでは、どっちつかずのIT戦略しかできない」(阿多氏)
日本企業に渇を入れるマイクロソフト社長、阿多親市氏 | |
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阿多氏はまた、「IT活用の目的は現状維持ではない」ことも指摘する。つまり、現状を打破するためにITを活用することが企業成長につながるとのことだ。そのために大切なことは、「Agility(迅速さ)」なのだという。「従来のウォーターフォール型の開発スタイルは、ステップを一歩一歩確認しつつ進めていくものだが、このステップが数カ月後には通用しないこともある。今話していることが来年通用するかどうか、誰もわからないものだ。競争に勝つためには、どんどん新しいシステムを入れ、現状の経営戦略に合わせて柔軟に変化させることが大切だ」と阿多氏。マイクロソフト製品はバージョンアップが多いことがたびたび指摘されているが、阿多氏はこのような理由から、数カ月単位のバージョンアップというサイクルが決して早くはないと弁明した。
ITにおける重要課題はセキュリティ
今回の基調講演で阿多氏は、現在のITにおいて重要な課題はセキュリティだということも述べた。ネットワークが進化し、ワームやデータの悪用といったセキュリティ対策が求められているが、ファイアウォールを固めるとそれだけ使い勝手が悪くなるため、セキュリティと便宜性のバランスが問題になっているという。マイクロソフトでは信頼できるコンピュータ環境を作るべくTrustworthy Computingと名打った取り組みをはじめており、昨年10月末に同社のWindows 2000はISO 15408のセキュリティ評価共通基準認定(CC認定)を取得している。商用OSでこの認定を受けているのは同製品だけだという。
阿多氏は、同社が今週発表予定のWindows Server 2003と今秋発表予定のOffice 2003についても述べ、この2製品を組み合わせてできる新機能を一部紹介した。それは同社が推進するWindows Rights Managementを実現するもので、特定のファイルに対するアクセス権の詳細を設定することが可能となる。例えばメールに関しても、メールを一度しか読めない、コピー、編集、印刷もできない、といったような設定が可能だという。
セキュリティが重視される中、阿多氏はオープンソースソフトウェアの安全性を疑問視しており、「オープンソースソフトウェアの安全性はどうやって証明できるのか、また誰がテストし、問題があった場合に誰が責任を取るのかといった部分が明白になっていない」と指摘、マイクロソフト製品の優位性を述べた。
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