米Microsoft会長のBill Gatesは2002年4月、「Windowsにバージョンが多すぎると消費者が困惑し、競争にも悪影響を及ぼす」と法廷で証言した。しかし、それ以降同社が実行してきたのは、OSの「最新」バージョンを倍増させたことだった。たとえば2002年11月から、Windows XPだけでも3つの新しいバージョンをリリースしている。
米国9州とコロンビア特別区は2002年4月、Microsoftがブラウザやデジタルメディアソフトウェアといったミドルウェアを含まないバージョンのWindows XPをリリースするよう、連邦裁判所判事に求めていた。ミドルウェア抜きのバージョンにより、デスクトップ向けOSの競争が促されるとの考えだ。
しかしGatesは、このような行為がWindowsを「断片化」させ、PCソフトウェア市場で顧客の困惑や経済的混乱を引き起こすと反論した。なお、連邦裁判所判事は11月に9州の要求を退けた。
Microsoftは、「顧客の特定の需要に応えるために製品のバージョンを複数用意することと、Microsoftが設計・テストした製品の一部を他社が削除して、多数の種類が生まれることは大きく異なる」と主張している。
アナリストによれば、バージョン増加の背景にある目的は、Microsoftの独占市場内部で競争を生み出すことにある。OSの多様化は、消費者や企業がさまざまな選択肢を求めていることを、Microsoftが理解している証でもある。バージョンが多ければ販売が伸びるうえ、他社の代替品がないニッチ市場を埋めることもできる。
「Microsoftは基本的に自社と競合している。さまざまな分野向けにさまざまな製品をさまざまな価格で販売しているからだ」(米Kelley Drye & Warrenの独禁法担当弁護士のGlenn Manishin氏)
乱立するWindows、そして顧客側の混乱
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8年前Windows 95がリリースされた時点では、MicrosoftにはこのWindows95とWindows NTという2種類のOSしかなかった。だが、その後デスクトップ、サーバ、タブレットPC、携帯端末等の分野向けにさまざまなWindowsのバージョンが発売され、現在では合わせて20数種類ものWindowsが出回っている。そして、こうした各種Windowsの乱立に戸惑う顧客の声も聞かれる。バージョンの数が多すぎると、どれを選んだらいいのか、あるいは問題が起こった際にどうすればいいのかと、ユーザーが頭をかきむしる羽目に陥りかねない。
「たとえば、企業でITの管理者をしていて、勤務先にはデスクトップPC、ラップトップ、そしてタブレットPCが混在しているとする。そうなると二種類のWindowsについて、チェックしておかなくてはならない。あるいは、デスクトップPCとMedia Center搭載PCがある家庭でも、同じような面倒が起こる」(市場調査会社DirectionのアナリストMichael Cherry氏)
だが、Microsoft側ではさらに各Windowsの差別化を進めるのではないかと推測するアナリストもいる。IDCのRoger Kayは、タブレットPCやWindows Media Centerを例に挙げ、次のようにいう。「タブレットPCの特徴のひとつに、スタイラスでディスプレイ上で直接書き込みできる機能がある。これを可能にするディスプレイをラップトップPCに採用するメーカーが増えれば、MicrosoftはタブレットPCを発展させて、将来Windows XPのノートブックバージョンを開発することもできる。同様に、Windows Media Centerも進化し、XPのコンシューマ向けPC用バージョンになり得る」(Kay氏)
健全な競争がある市場かどうかを示すカギは、各製品に特定の購買者層向けに考えられた機能、ユーザーインターフェイス、その他の要素が存在していることだが、今日の携帯電話市場はまさにこの典型だ。
「消費者は自分がどの機能を欲しいか知っている。そして、それこそ彼らが興味を持っている事柄だ」とTechnology Business ResearchのアナリストLindy Lesperance。「消費者は自分の携帯電話でどんなOSが動いているかを知りもしないし、また気にも留めない」
ふつう差別化といえば、いろいろなハードウェアのメーカーが機能を追加したり削ったりすること、もしくはソフトウェアメーカーが異なるOSを提供することから生まれるもので、Symbianの携帯電話用OSは後者の代表例だ。しかし、Windowsのバージョン乱立については、ベースとなるコードはどれも同じで、ただそれにいろいろな違いをつけているに過ぎないと指摘するアナリストもいる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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