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X11はアップルの秘密兵器となり得るか?

2003/01/27 08:51
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 米Apple Computerは、Mac OS上でUnixアプリケーションが簡単に動作するソフトウェアをリリースした。Unix圏域に勢力を伸ばそうという試みだ。

 今月上旬のMacworld Expo期間中、Appleは自社のUnixベースOSであるMac OS X向けのX Window System(X11)を公表した。X11は、UnixやLinux上で基本的なグラフィック環境とウィンドウ画面を提供し、あるバージョンのUnix用に開発されたソフトウェアを別バージョンでも走らせることができる。業界では世界中に約3千万人のX11ユーザーがいるとされている。

 AppleはX11をサポートすることで、ビジネスユーザーをMacに引き込むという長年苦戦してきた目標に近づけるかもしれないのである。Appleは、アーティストや映画編集者などの間では広く人気が定着しているものの、収益拡大のためにはさらなるアピールの必要がある。最新の四半期収益報告で、Appleの収益は近い将来横ばいになると予測されている。また、数名の市場アナリストたちは、新しいハードウェアやデジタルデバイスの展開にもかかわらず、Apple製品は地盤を失うだろうとみている。

 Appleは、X11のリリースでUnixユーザー間におけるMac OS Xの需要が急激に高まり、同OSへのUnixアプリケーションの移植が促進されることを期待している。Appleは21日、同製品ベータ版のダウンロードが1月7日以来10万件に達したと発表した。

 しかし、ビジネスユーザーにアプローチするには、Appleはまずソフトウェア開発者にアプリケーションをOS Xへと移行させる必要がある。

 「Mac OSに説得力がないわけではない」とIDCのアナリスト、Al Gillenは言う。「非常にいい製品なのだが、ビジネスユーザー獲得のためには、適正価格にするだけでなく、それに適したアプリケーションも必要だ」(Gillen)

 X11は、UnixプログラムがMac OS X上でネイティブOS環境と同様に作動するウィンドウ環境を提供する。またネイティブOS Xアプリケーションの開発を迅速にし、開発の間もMac上でプログラムを走らせることができる。さらにX11は、Unixにはないノート型というオプションも提供している。

 Appleは、X11がUnixアプリケーションからMac OS Xへと移行する鍵になると見ている。「X11は、これまでMacの世界に踏み込みたいと考えていたができなかった人々にとって、Macへの掛け橋となると信じている」と、Appleの開発技術シニアディレクターのRichard Kerrisは言う。

 Gartnerのアナリスト、Michael Silverは、これまでのUnixユーザーがMac OS Xへ移行したいと考える理由は数多いと指摘する。中でも明らかな理由は、「価格の安さ」だという。

 ハードウェアの価格のみを見ても、UnixからAppleへの切り替えは意義があるいえる。1GHz UltraSperc IIIプロセッサ、2GB RAM、73GB HDD搭載のSun Blade2000ワークステーションは、1万5995ドルで販売されている。一方1.25GHzプロセッサ、2GB RAM、120GB HDD搭載のPower Mac G4は4599ドルだ。しかもMacは、通常UnixやLinuxワークステーションでは提供されていないDVD録画やワイヤレスネットワークなどの機能を備えている。

 X11のベータ版は無料だが、Appleでは正規製品を発表する今年後半には価格を公表するとしている。

 Unix上では、ビジネスのデファクト製品であるMicrosoft Officeがうまく作動しない。つまり、UnixワークステーションとPCの両方を使用しているケースは数多く、サポートとIS部門のコスト負担が問題となっているとのことだ。Silverは、UnixからMac OS Xへの移行が企業システムの一本化を実現するだろうと述べている。

 「Microsoft Officeが動くという事実に引きつけられる人は多いだろう」とSilverは言う。もう一つの問題は、携帯性だ。Sunはノートブック型のUnix製品を提供していない。「Appleには数多くのMac OSを搭載したノートブック製品があり、これにX11を組み合わせてUnixアプリケーションを走らせることができる」

とらえにくい企業ユーザー

 Appleが企業向けの売上げ増を狙っているのであれば、Unixユーザーを引き入れることは必要不可欠だろう。Appleはバイオテクノロジーや科学研究といった、Unixへの乗り換えが進むチャンスのある特定の分野にターゲットを絞る必要があるとアナリストは指摘する。

 Unix戦略は、Appleが高等教育やエンジニアリング、科学研究といった分野へのアプローチするには良い方法だとSilverは言う。

 同時にAppleは、Linuxを試験的に使っているUnixユーザーもMac OS Xユーザーとして獲得したいと考えている。また、ハリウッドのコンテンツクリエーターや高性能コンピュータユーザーに対する販売の可能性も期待しているのだとAppleのKerrisは言う。X11は、Unixの各バージョンと同様にLinuxもサポートしているのだ。

 AppleのUnixユーザーへのこのような試みに対し、IBMやSun MicrosystemsなどのUnixワークステーションやサーバの伝統的メーカーではLinux戦略を拡大している。Unixの代わりとなる製品を求める顧客ニーズに対応するためだ。

 これまでのところ、Linuxの需要は主にサーバ分野に限られており、デスクトップ製品への進出はわずかであった。実際Gartner Dataquestでは、今年初めてIntelプロセッサ搭載サーバの出荷がRISCプロセッサ搭載サーバの出荷を上回ると予測している。これは、Intelのサーバプロセッサ上で動作するLinuxの需要が高まったためだと同社では見ている。

 しかしGillenは、Mac OS XがUnix市場に対抗できるものとはまだ考えていない。高性能な代替品を求めている多くの企業にとって、Linuxの低価格とアプリケーションの数は非常に魅力的であるからだ。ただMac OS Xは、Linuxの普及が進んでいない特定分野のUnix市場においては可能性があるだろう。映画製作や特撮といったこのような市場では、昔からMacの需要が高かったからだ。

 「LinuxはUnixにとって替わるものとして大きくクローズアップされているが、同時にMac OSも代替品として注目に値する代替品だ」とGillenは言う。

 Gillenは、Mac OSがUnixやLinuxユーザーを獲得できる特別な市場の一つとして、ハリウッドを挙げている。「ここはMac OSが今でも元気な市場だ」と彼は述べる。「ハリウッドでは、Mac OSを締め出すことができないのだ。」

 しかしGillenは、Linuxの価格を考えると、このような市場以外でMac OS Xがどの程度Linuxに目を向けているUnixユーザーを獲得できるか疑問視している。

 Macには別バージョンのX11も存在するが、Appleのバージョンには独自の統一性や機能が備わっていると開発者は言う。Mac OS Xと他のアプリケーションの統一をシンプルにするため、Appleのインターフェースには独自の仕掛けがいくつもある。例えば、X11のアプリケーションとMac OS XのAquaユーザーインターフェースの間でのコピー&ペースト機能は、一般のキーボードショートカットを用いれば可能であるし、プログラムをドック上に最小化させることもできる。

 AppleのKerrisが言うには、同社のツールを使うと、「他のプラットフォーム上で使っていたコンパイラと同じものを使い、Appleのプラットフォーム上で自分のコードを使い再コンパイルすれば、Appleのプラットフォームでそのコードを使うことができる」とのことだ。

X11の正当性を求めて

 独立系開発者で、OpenOfficeのMac版製作プロジェクトに関わったEd Peterlinは、Appleの動きが「Mac業界にX11の正当性を証明する雰囲気」をもたらした、と語っている。「これは、X11のアプリケーションに対する消費者の信頼性を高めるものだ」

 Apple版X11は10%から25%の動作性能の向上を約束するものだ、とPeterlinは言う。

 OpenOffice開発グループは、Microsoft Officeの代替品となるオープンソース製品をMac OS Xに移植する研究をしている。同グループでは、AppleのX11ソフトを使ったOpenOfficeを2003年春に、またAquaをサポートするネイティブ版を2004年前半にリリースしたいと考えている。

 このようなAppleの動きで、MatLABやSimulinkといった研究者用プログラムや、GAIMといったインスタントメッセージソフトも恩恵を受ける可能性がある。

 FreeBSDやDarwinといったソフトウェアの販売を手がけるBSDMallのChris Colemanは、Apple版X11の再流通ライセンスを獲得したい考えだと述べている。

 AppleのKerrisによると、「我々は、CAD、mCAD、エンジニアリングCADなどの全主要プレイヤーに対し、OS Xへの移行について話し合っている」とのことだ。

 アナリストは、Mac OS X用のアプリケーションの多くはデスクトップ用で、Linuxの普及が進んでいなかった分野であることを指摘している。別のOSへ乗り換える唯一の選択は、Windows PCでしかなかったのだ。

 Macをアピールできる可能性があるのは、UnixワークステーションとMacまたはPCを併用している企業だろう。Mac用Microsoft Officeや、ストリーミングメディアやその他インターネット技術をOS Xがサポートしているという点は魅力的だとアナリストは言う。

 「このような特定の市場においては、開発者がAppleに魅力を感じる可能性もあるだろう」とIDCのGillenは語っている。

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