「工場から店頭の陳列棚までキッチリ追跡します」―。無線信号を利用した在庫管理技術がいよいよ普及の兆しを見せてきた。小売最大手の米Wal-Martが近々、非接触タグ(RFID:Radio Frequency Identification)の本格的な導入を表明するためだ。
Wal-Martは来週シカゴで開催される産業協議会Retail Systems 2003で、RFID技術の導入を明らかにする見込み。同社の関係者筋は、「Wal-Mart幹部がプレゼンテーションを行い、上位100社のサプライヤーに対して2005年までに無線での在庫管理装置を導入するよう呼びかける予定だ。具体的には、製品に貼り付けるチップや、倉庫で同チップのデータを読み取るためのスキャナなどがこれにあたる」と語っている。
さらにこのプレゼンテーションでは、RFIDに関する標準仕様策定の重要性やサプライチェーン全体での導入効果についても取り上げる予定という。ただし、現在のところこの件に関するWal-Mart幹部のコメントは届いていない。
Wal-MartがRFIDに太鼓判を押すことで、世界中のサプライチェーンでRFIDの整備が進む動きがでてくる。これは最新技術の製品・サービスを販路拡大させようとやっきになっているハイテク企業にとって、カンフル剤ともいえる大改造だ。
RFIDへの投資は決して安価ではない。米AMR ResearchアナリストのPete Abellは、「RFIDに費やされる費用はおそらく、2000年問題のそれよりも多くなる」と予測する。しかし同技術の支持者は「RFIDは長期的利益をもたらすものであり、在庫管理・物流におけるバーコードへの依存度を減少できる可能性がある」と語っている。
RFIDタグは、メーカーが製品データの入力・追跡を簡単に行えるため、在庫管理の合理化や改良につながる可能性がある。例えば、箱に詰められた商品のデータを在庫システムで記録する場合、箱から取り出して1つずつスキャンする必要がない。RFIDスキャナでは従来のバーコードシステムではできなかったこと、つまり箱に梱包された状態のままで、商品全てのチップから信号を一度に検出することができるからだ。
こうしたことなどで、コスト面で大きなメリットをもたらす可能性がある。Wal-Martの2002年売上高は2178億ドル。そのうち「貯蔵、輸送、商品管理などのサプライチェーン関連費用は推定10%」(Abell)で、「RFIDにより、関連費用を年間6〜7%削減できる可能性がある。これをWal-Martの2002年実績に当てはめると、13億〜15億ドルの削減にあたる」(同氏)という。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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