検索エンジンマーケティングの最新情報が得られる一大イベント「Search Engine Strategies」が米国サンフランシスコで開催された。現地で聴講したATARA 代表取締役CEOの杉原剛氏にイベントの様子をレポートしてもらった。
ATARAはWeb APIを活用したシステム開発と広告関連コンサルティングを提供する会社で、役員は皆、グーグルの広告事業に関わってきた。なかでも杉原氏はオーバーチュアとグーグルという2大検索エンジン会社の広告事業に携わった初の日本人で、両社の広告APIを業務システムに落とし込むプロフェッショナルだ。杉原氏が独自の視点からまとめた、米国での検索エンジンマーケティングの最前線は以下のようなものだ。(編集部)
2010年8月16日から20日にかけて、米国サンフランシスコで開催された「SES San Francisco 2010」カンファレンスに参加した。検索エンジンマーケティングに特化したイベントとしては世界最大級で、1年中、各地で開催されるシリーズでもある。なかでも毎年夏に西海岸で開催されるイベントは特に規模が大きく、検索エンジン各社からの新しい発表も多い。そのため、筆者は毎年参加し、SEOやリスティング広告の最新動向について情報収集をしてきている。
SESでは何かしら新たなテーマが毎年取り上げられ、活発に議論される。しかし、2009年までの数年間はキーノートスピーチからセッションまで、ソーシャルの話題一色だった。FacebookやTwitterなどを中心としたソーシャルメディアがサーチの世界をどのように変え、検索エンジンがソーシャルの情報をどのように取り込んでいるか。さらに、サーチとどう連携してマーケティング施策を展開するかなど、あちこちで議論されていた。
しかし、2010年は一変して、ソーシャルの話題は一段落した様子だった。取り上げ数が減ったわけではなく、普通にセッション内容の一部として組み込まれていた印象だ。その代わりにハイライトされたのがサーチとディスプレイ広告の連携についてである。
確かに、ディスプレイ広告がユーザーの検索行動に促す影響など、両者の関連性についてはかなり以前から取り上げられてきた。しかし、ここにきて改めて議論される背景には、最近のディスプレイ広告を取り巻く環境の変化が影響していると言える。
その背景は2つあると考えている。まず1つは、ここ数年間議論が活発だったアトリビューションが挙げられる。アトリビューションは、目標コンバージョンに至ったユーザーの行動軌跡を測定し、接触した施策それぞれに貢献度合いを割り当て、各施策の貢献度合いに応じた広告予算の最適配分を行う取り組みである。
今までは、広告キャンペーンの目標コンバージョンに至る直前にクリックされた施策が、直接的に貢献をして効果を発生させたと見なされてきた。しかし、その前に接触した他の施策に関しても、間接的に貢献していると見なそうという動きが、米国では数年前から活発に議論されてきた。
なぜ、間接的な貢献までも評価の対象にするのか。それは、ユーザーが商品を購入する場合、あらゆる情報源をたどって最終的に購入に至っているということがわかってきたからだ。
ユーザーの行動軌跡を例として挙げると、ディスプレイ広告を見てまず商品に興味を持ち、いくつかの異なるキーワードで検索をして比較サイトや商品説明サイトを探し、ブログやSNS上の評価を見て最終的に自分の条件を満足させてくれるサイトで購入をする。検索したら即購入というような優良ユーザーばかりではなく、多くのユーザーは色々な情報を求め、移り気で、購入に至るまでのプロセスは長い。そのため、コンバージョン直前のラストクリックに頼りすぎる予算配分は正しくないのでは?という考え方が広まってきたのだ。
コンバージョンに至ったユーザーの軌跡を測定するテクノロジーも着実に進化している。データをどのように分析するべきかについても試行錯誤しながら、ある程度手法が確立されてきた。そのため、果たしてディスプレイ広告への投資配分は正しく行われているのか。それに見合う効果が出ているのか。これらを検証したいという広告主が大手企業を中心に欧米で増えてきた。
特に、ディスプレイ広告はクリックされて購入に至った場合にだけ効果を発揮すると過小評価されることが多い。そのため、閲覧された後、間接的に購入につながった場合の貢献度も測りたいというニーズが出てきているのだ。
当然、広告主の新たなニーズの発生にサービス提供側も続々と反応している。広告主の意識の変化から、検索エンジンマーケッターはサーチだけではなく、ディスプレイ広告の理解が必要不可欠となっている。そして、アトリビューション分析をベースにサーチとディスプレイ広告の相関関係を把握し、双方をより効果的に活用するキャンペーンの提案が求められている。
ディスプレイ広告の貢献度をもっと証明したいと考えるアドネットワーク側の思惑もある。特にサーチとディスプレイ広告ネットワークの両方を保有するGoogleが、最近ではグーグルディスプレイネットワーク(AdWordsのコンテンツターゲット広告、DoubleClick広告、YouTube広告を含む総称)の拡販に躍起になっていることは否めない。
Googleはディスプレイ広告のビュースルーがコンバージョンに至ったかを示す機能を持っている。リスティング広告でも、コンバージョンへの間接効果があったかを測るサーチファンネルという機能を出しているが、この二つは将来的に融合されることも言及していた。
そうなると、Googleネットワーク内のユーザーのコンバージョンパスは把握できるようになる。Googleネットワークでの直間接効果がより示せれば、広告予算も比例して投じられる。業界の様々な動向から、アトリビューションは必須の取り組みになりつつあるのだ。
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