短距離走で五輪に出場するMike Rodgers選手は、ハイエンドのヘッドホンが金メダル獲得に寄与してくれると期待をかけている。
Rodgers選手など米国の陸上スター選手数人がトレーニングに取り入れている「Halo Sport」ヘッドホンは、脳に電気的な刺激を与え、ニューロンと筋肉との同期的な接続を活発化する装置だ。リオデジャネイロで現地時間8月5日に開幕した夏季五輪では、そうした神経の接続によって紙一重の(1ミリ秒程度の)差で優位に立てる可能性がある、とRodgers選手は語る。
「自分の身体に対する効果を今のところ気に入っている」。Rodgers選手は、光沢のある黒いヘッドセットについてこう語った。2015年の世界リレー大会で4×100mを制したチームのメンバーである同選手は、この1カ月間、Halo Sportを使って世界各地でトレーニングを重ねてきた。
アスリートの間では、記録を伸ばすためのウェアラブルデバイスや、技術を測定するアプリが何年も前から使われている。Halo Sportはその最新の取り組みであり、脳への刺激によって身体能力に影響を与えようとする試みだ。脳が強くなれば身体も強くなる、というのがそのコンセプトである。
Halo Sportには、脳に電流を流すtDCS(経頭蓋直流刺激)という技術が使われている。ヘッドホンに付いている突起物が電極の役目を果たし、脳の運動皮質につながるニューロンをスピードアップする。「ニューロプライミング」と呼ばれる手法だ。
Halo Neuroscienceによれば、ニューロプライミングはアスリートの体力、瞬発力、敏しょう性をトレーニング中に強化できるという。
「ただの神経刺激装置ではない」。Halo Neuroscienceの最高経営責任者(CEO)Daniel Chao氏は先ごろ、同社のサンフランシスコ本社でこのように述べた。「力を出すための筋肉や、持久力を生む心臓について考えている。最高の成績を出せるように、そして可能な限り強くなれるように、脳を準備しているわけだ」(Chao氏)
Halo Neuroscienceは、医学博士のChao氏とバイオメディカルエンジニアのBrett Wingeier氏が2013年に設立した。両氏は以前、てんかん発作の治療機器「NeuroPace」の開発に当たっていた。NeuroPaceは米食品医薬品局(FDA)によって2014年に承認されている。
創業から日は浅いものの、Halo NeuroscienceはAndreessen Horowitzのベンチャー投資家Marc Andreessen氏など、名だたる投資家を引き付けてきた。また、米連邦通信委員会(FCC)の元委員長Reed Hundt氏と、Apple傘下のBeatsの元CEOであるSusan Paley氏が、Halo Neuroscienceのアドバイザーに名を連ねている(Haloのヘッドセットは偶然にもBeatsの人気のデザインと似ているが、それだけではない)。
Chao氏によれば、Haloは米国のスキーチームが使用しているほか、メジャーリーグベースボール(MLB)、ナショナルフットボールリーグ(NFL)、プロバスケットボール協会(NBA)の多数のチームで使われているという。たとえば2015年NBAの覇者ゴールデンステート・ウォリアーズは、記録的な成績を収めた昨シーズンにHalo Sportのパイロットテストを実施している。
「@HaloNeuroのおかげで、わたしもチームメイトもこれを試せている。結果が楽しみだ」(ゴールデンステート・ウォリアーズのJames Michael McAdoo選手によるツイート)Thanks to @HaloNeuro for letting me and my teammates try these out! Looking forward to seeing the results! pic.twitter.com/Gjzs94Zv1F
— James Michael McAdoo (@jamesmcadoo) 2016年3月16日
「チームを良くするために、できるだけ隅々までメリットを調べている」。ウォリアーズのデジタルプロジェクトを率いるDaniel Brusilovsky氏は、2016年に入ってからこう語っており、あと1勝をつかめる強みが重要だと付け加えた。
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