Adobe Systemsは、困難ではあるが賢明な移行を開始しようとしている。
カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くAdobeは、「Creative Cloud」と呼ばれるサブスクリプションサービスの提供を5月に開始して、同社の中核的なソフトウェア事業を全面的に見直す予定だ。Creative Cloudには、同社の新しい「Creative Suite 6」(CS6)製品群とそのほかのさまざまな製品およびサービスがバンドルされる。AdobeはCreative Cloudを成功に導くために、同サービスが従来型のソフトウェアライセンス方式より優れた価値を提供することを顧客に納得させなければならない。
その変化がいかに困難なものになるかを示すデータを紹介しよう。米CNETが3月に実施した調査では、Creative Cloudについて回答者の32%が好意的な印象を抱いているのに対し、41%は否定的にとらえていると答え、同サービスへの反応が冷ややかであることが明らかになった。
そして、62%の回答者が価格について否定的な反応を示した。Creative Cloudの米国での料金は、年間契約を結ぶと月額50ドルで、契約と解約の切り替えが比較的容易な月単位のオプションを選択すると月額75ドルだ。2012年中に登場を予定している企業向けの「Team」エディションの年間契約を結んだ場合、料金は1ユーザーにつき月額70ドルである。そして、永久ライセンス版のアップグレードの購入に興味を持つかもしれない既存のCS3、CS4、およびCS5.xユーザーを引き入れるため、Adobeは発売記念として月額30ドルの特別価格も用意している。
同サービスの目玉は、完全なCS6製品ラインへのアクセスだ。使用できる製品には、画像編集の「Photoshop CS6」や動画編集の「Premiere Pro」および「After Effects CS6」、デザイナーやクリエイティブなプロフェッショナルを対象とするそのほかの多くのパッケージが含まれる。また、タブレットアプリ「Adobe Touch Apps」の製品ラインや、HTML5時代のウェブデザインのための新しい「Edge」および「Muse」プログラム、「Lightroom」、そしてファイル共有やウェブサイトホスティングなどのいくつかのオンラインサービスも含まれる。
Creative Suiteの購入は必須ではない。Adobeは従来の永久ライセンス版も販売する予定だ。ソフトウェアは単独で、またはさまざまな形態のバンドルとして販売される。従来の販売方法であろうと、サブスクリプションであろうと、ソフトウェアはユーザーのコンピュータ上で動作する。
Adobeは、すべてのユーザーが即座にサブスクリプションへ移行することは期待していない。
Adobe Creative Professionals担当シニアマーケティングディレクターであるScott Morris氏は、「この動きは、現在の市場の一歩先を行こうとしているAdobeの姿勢を示すものだ。それを気に入ってすぐに飛び乗る人もいれば、徐々に取り入れる人もいるだろう」と述べた。
実際に、AdobeはCreative Cloudの利点を証明する必要があるだろう。しかし、Creative Cloudをオプションとして追加するAdobeの動きは、全体的に適切なものだ。ここでは、その理由について説明する。
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