このほかに、Googleの使用するCookieに対する苦情もある。Cookieは、ほとんどのウェブサイトが特定のユーザーとその行動を結びつけるために使用しているものだが、Googleの場合は、その期限が2038年に設定されているのだ。「Googleは複数のCookieをクロスリファレンスすることはないと述べているが、実際はいつでもそれができる状態にある」とHoofnagleは証言のなかで述べていた。しかし、Cookieの場合, ユーザー自身がこれを削除したり無効にしたりすることもできる。
ユーザーはCookieがなくてもGoogleで検索できる。Cookieが使われ、ユーザーがそれを削除しなければ、ユーザーによる検索とそのCookieが結びつけられる場合もあると、Wongは言う。しかし、特定のユーザーが自発的に身元を特定できる情報を適用しない限り、Googleでは検索の記録とそのユーザーを結びつけることはできない。そのため同社では、例えばユーザーの保有するGmailのアカウントとその検索記録を関連させることは行っていない。
Googleの「Desktop Search」は、ユーザーが自分のファイルや、ローカルマシンに保存したウェブのアクセス履歴を検索可能にするアプリケーションだが、2004年にこれがリリースされた時にもちょっとした騒動が持ち上がった。プライバシー擁護者らは、あるユーザーのコンピュータにアクセスできる人間なら、このアプリケーションを使って簡単に秘密の情報を探し出せてしまうと心配した。
ビジネス向けのDesktop Search無償版には、ユーザーが利用する際にパスワードの入力を求めるようにするオプションが付いているが、一般ユーザー向けのバージョンにはこの機能がない。
さらに、Googleが「Web Accelerator」をリリースした際にも、ユーザーのプライバシーに対する懸念が生じていた。ブロードバンドユーザー向けにダウンロード配布されたこのソフトウェアは、Googleのサーバにキャッシュされたウェブページを提供することで、そのページへのアクセスを高速化するよう考えられたものだった。しかし、実際のところ、このサービスによってGoogleに集まるデータは、ユーザーが利用するISPが手にするものとそう変わらない。
これらのプライバシーへの懸念に共通するのは、Googleのデータ保有期間の長さだ。
ウェブ検索の間に生成されたログファイル(この場合、ユーザーの身元は特定されていない)は、そのデータが「有効である」限り保存されるとWongは述べている。同社はその期間についての情報や他の詳細を明らかにしなかった。
Googleは、ログファイルのデータやCookieとGoogleのアカウントを結びつけ、同社の検索ページでウェブサイトのランキングを不正に操作しようとする試みを発見したり、DoS攻撃の出所を突き止めたり、またはサービス全般を改善するのに役立てることができると、Wongは言う。
プライバシーの懸念を抱くGoogleユーザーには、Googleのサービスに登録しないか、もしくは2種類のブラウザを使い分けるという選択肢がある。ウェブ検索と、Gmailやその他のGoogleサービスとで別のブラウザを使えば、これらの情報が結びつけられることはない。
さらに心配性のユーザーには、プロクシーサーバをつかった匿名化ネットワークを利用するという手もある。EFFでは「Tor」という名でこのようなサービスを提供しているが、これらのネットワークでは暗号化と複合化を行う複数のルータを経由して通信がやりとりされるため、その出所や目的地が追跡不可能になっている。
「Googleで何か調べものをする前に、それに関する情報が自分の永遠に残る記録に含まれてもいいかどうかを考えてみるべきだ。もし、それがいやなら、Googleを使わないか、もしくは検索の出所が割り出されないような手段を講じるべきだ」(Bankston)
GoogleはDoubleClickではない
公平を期すために指摘しておくと、Googleに関するプライバシーへの懸念は、1990年代にオンライン広告配信ネットワークのDoubleClickが引き起こしたものとは比べものにならないほど小さい。DoubleClickは、消費者のオンラインでの活動とオフラインでの活動を記録したデータを組み合わせようとして、連邦通信委員会(FTC)から訴えられた。連邦政府や各州との訴訟を和解させた同社は、このインターネットを使った広告用プロファイリングサービスを廃止した。
Googleが5月にメディアデーを開いた際、CEOのSchmidtは記者団との質疑応答のなかで、プライバシーの問題とより良いサービスを提供することとの間にはトレードオフがあることを認めた。
「これらの事柄については、ユーザーの選択に任せるというのが、われわれの全体的な考えだ。一連の技術を利用せず、Googleで利用する機能に関して匿名性を保てるという選択肢はいつも用意しておく」(Schmidt)
Gartnerのアナリスト、Allen Weinerは「全体的に見て、このプライバシーに対する懸念はおそらく行き過ぎだと思う」と述べている。
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