PHSというと、通話の音質が良く料金は安いが、通信速度が携帯電話に比べて遅いというイメージを持たれがちだ。しかしウィルコムはそんなPHSのイメージを覆すべく、通信速度が上下それぞれ20Mbps以上の「次世代PHS」と呼ばれる通信規格を開発中だ。
ウィルコムは2月21日、東京都内において、次世代PHSに関する実験の様子を公開した。実験を通じて基礎データを集め、規格の標準化につなげるとともに、次世代の高速移動体通信技術として総務省の認可を得ることを狙う。
次世代PHSとは、ウィルコムが開発している、より高速なPHS規格のこと。広帯域の周波数と、OFDMA(直交周波数分割多重アクセス)と呼ばれる高速化技術を使って、上下それぞれ20Mbps以上のスピードを出すことを目指している。総務省のワイヤレスブロードバンド推進研究会の報告書では、広帯域移動無線アクセス技術の1つとして位置付けられており、KDDIなどが推進するモバイルWiMAXと同じく2.5GHz帯を割り当てられるのではないかとされている。
次世代PHSと現行のPHSの比較
出典:ウィルコム
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ウィルコムは1月に、総務省から次世代PHSの実証実験のための実験免許を受けており、現在は主にOFDMA技術の伝送性能を測る実験をしている段階だ。
実験では2.3GHz帯を使い、実際にSkypeのビデオチャットをしたり、USENの動画配信サービス「GyaO」のストリーミング映像を再生する様子が披露された。屋内に基地局とアンテナを置いた場合で、実測の通信速度は1台の接続であれば1.8Mbps程度、2台同時接続の場合は1.4Mbps程度だった。「今回の実験はOFDMA技術の性能を測ることが目的で、機器のチューニングをしていないため、通信速度が遅い。6月以降は伝送速度を向上させ、20Mbps以上を目指す」とウィルコム開発本部長の黒澤泉氏は説明する。なお、基地局や受信端末はウィルコム向けにカスタマイズした米Adaptix製の機器を使った。
ウィルコムでは今後、複数の高速化技術を使って伝送速度を向上させる実験を進める。具体的には、アンテナに指向性を持たせて不要な電波の影響は受けないようにし、安定した高品質の通信を可能にするアダプティブアレイアンテナや、複数のアンテナを使って通信を高速化させるMIMO技術、複数の端末が同時に同じ周波数を利用できるようにすることで1基地局あたりのユーザー数を増やすSDMA技術などを使う予定だ。また、PHSの普及推進を図る業界団体「PHS MoU」でも次世代PHSの標準化を進める。
商用化の時期については、「ワイヤレスブロードバンド推進研究会では2008年ごろの実用化が期待されているが、技術の標準化などを考えると難しい」とウィルコム企画開発部課長補佐の安藤高任氏は話し、3〜5年後になるのではないかとの見通しを示した。
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