「NTTドコモは『おサイフケータイ』、auは『音楽』を売りにしている。『ボーダフォンは?』と聞かれたときに、強調できるところが弱くなっていた。しかし、我々が今まで評価されてきたのはメール機能であり、今後もより高度化した使いやすいサービスにしていく」--ボーダフォン代表執行役会長の津田志郎氏は5月24日、2005年3月期の決算発表の席上において今後の同社の戦略を語り、メール機能に注力する考えを示した。
ボーダフォンは写真が貼付できる「写メール」や、動画が添付できる「ムービー写メール」を他社に先駆けて提供してきた。しかし最近ではサービスが他社の後追いとなることが多かった。同社はこの状況を打破したい考えで、その第一弾として6月より第3世代携帯電話(3G)向けに月額840円でメール送受信が使い放題になる国内における料金プランを提供する。今後の具体的な新メールサービスについては明らかにしなかったが、「より高度で使いやすい形にしていく」(津田氏)とした。
ボーダフォン代表執行役会長の津田志郎氏 |
また、3G端末の契約者数が伸び悩んでいることから、端末と通話エリアの両面でてこ入れを図る。2004年12月から投入した3G端末は「世界で使える共通端末というところに重点を置いた結果、機能が犠牲になってしまった」(津田氏)と反省し、今後は日本市場向けにインタフェースなどを改善した端末を開発する。
通話エリアについては、郊外でのカバレッジを高めるため、2006年3月期中に屋外4000局、屋内1400局の基地局を設置する。「(2006年の)番号ポータビリティ制度の開始に向けて、サービスエリア面で他社にひけをとらないようにする」(津田氏)
2005年3月期の業績は減収減益、シェアも右肩下がりに
ボーダフォンが発表した2005年3月期の連結決算は、売上高が前期比11.2%減の1兆4700億円、営業利益は同14.6%減の1580億円、経常利益は同15.4%減の1534億円、純利益は同2620億円改善して1620億円の黒字に転じた。
このうち移動体通信事業の業績は、売上高が前期比2.6%減の1兆4702億円、営業利益は同14.0%減の1576億円、経常利益は同15.4%減の1538億円、純利益は同68.8%増の1869億円となった。
ボーダフォンは3G端末の不調などが原因で契約者数が落ち込んでいる。月間契約者純増数は2004年12月からマイナスとなっており、市場シェアは2003年上半期をピークに下がり続けている。さらに、高額利用者が他社に流れていること、プリペイド端末の利用者が増えていることから、契約者1人あたりの月間平均利用額にあたるARPUも落ちている。
2005年3月期の契約者純増数は8万9300件で、2004年3月期の103万9100件と比べて大きく減った。同社の2004年下半期の市場シェアは17.3%(前年同期比1ポイント減)、ARPUは6020円(同470円減)となった。
新規顧客1人あたりの獲得費用は前期比17.8%増の3万8300円となって経営を圧迫した。これは、3G端末の販売促進のために市場での販売価格を引き下げた結果だ。
2006年3月期の業績予想については明らかにしていないが、「厳しい状況であることには間違いない」と津田氏は話しており、2005年上半期中は契約者数の減少が続くと見ている。
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