Skypeは、「CIOではなく、あくまで個人やワークグループ」をターゲットに想定した、企業向け電話サービスの提供を計画している。ネット経由の無料VoIPサービスを提供している同社は、これにより新たな大規模市場に揺さぶりをかけたい考えだ。
Skype共同創業者のNiklas Zennstromは米国時間6日、顧客の獲得は簡単にはいかないだろうと語った。企業顧客にサービスや機器を提供している先行各社は、顧客を引き抜かれまいと激しい競争を繰り広げており、顧客のほうでも既存の業者に対するロイヤルティが非常に高い。また、Skypeのような、ピア・ツー・ピア技術を利用する、従業員が60人あまりの、販売チャネルもほとんど持たないような新興企業を信頼して、仕事で使う電話網を任せる企業があるだろうか。
これこそSkypeにとって最大の課題となるだろう。創業からわずか1年の同社は、コンシューマ向けのサービスですでに大ヒットをとばしている。同社はいま、これまでに合わせて2200万のユーザーが同社の無料ソフトをダウンロードし、さらに利用時間は合計3000万時間に上るという事実を、利益に変えようとしている。
「自分たちで何でもできるというわけではないので、再販業者やハードウェアメーカー、SI企業、コンサルティング会社といったパートナーを探し、力を借りようとしている。しかし、勝負の決め手は会社の規模ではない。動きの素速いところが、のろいところを倒すのだ」(Zennstrom)
同氏は、ビジネス向けのサービスの提供時期など重要な情報の詳細は明かさなかった。それでも、「Skype for Businessには、ネットに接続したPC同士なら無制限に電話をかけられる無料のVoIPソフトや、いくつかのPDA機能が含まれる。また、SkypePlusというボイスメールや強化した電話会議機能、さらに普通の電話からの通話を受けられるSkypeInなど、有料で使える新機能も出す」と述べた。
ビジネス向けサービスの開始とともに登場する新たなハードウェアについては、Siemensがすでにコードレスフォンタイプの端末の開発に取り組んでおり、Skype For Businessにはこの端末が含まれるだろうと、Zennstromは述べた。Skypeはビジネス向けのサービスを使って、すでに提供しているSkypeOutというサービスを販売していくことになりそうだ。このサービスはSkypeユーザがPCやPDAから普通の電話や携帯電話へ、1分あたり2セントで電話をかけられるようにするものだ。
Skypeはピア・ツー・ピアのアーキテクチャを採用しているため、従来の電話会社のようにスイッチや回線といったインフラを準備する必要が全くなく、初期投資も最低限で済む。同サービスは毎日75万人に利用されているが、これらのユーザーは、その都度ネットワークをつくり出し、コンピュータのリソースを共有してトラフィックの流れを管理したり通話の品質を一定のレベルに維持している。Skypeの話では、同社のネットワークは有機的に拡大することができ、トラフィックが増大した場合も、これをサポートするために新たな機材を追加する必要はないという。
この「回線網不要」というコンセプトはこれまでになかったもので、1世紀の歴史を持つ電話業界を揺るがしているVoIPプロバイダーにさえ、こうした事例はまだない。従来、電話会社を始めようと思えば数十億ドルの投資が必要だったが、Skypeの場合、この膨大な費用はおろか、2〜3000ドルかかるVoIPサービス提供のための初期コストももはや必要としない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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