ある研究者のグループが、通信手順を決めるための新たなプロトコルを開発したと発表した。このプロトコルを使えば、通信キャリアで使われるような高負荷に耐えるネットワークの接続をより短時間で簡単に導入できるようになる。
「Just in Time(JIT)」と呼ばれるこのプロトコルは、通信回路のセットアップや切断にかかる時間を大幅に短縮するもの。MCNC開発研究所で先進ネットワーク研究部門のバイスプレジデントを務めるDan Stevensonは28日(米国時間)、米連邦通信委員会(FCC)の技術諮問委員会(Technological Advisory Committee)に報告した。
同プロトコルはこれまで光ファイバネットワークで利用されていたが、研究者らはその適用範囲を無線ネットワークにまで拡大しようとしている。Stevensonは、四半期ごとに開かれる同委員会のミーティングの席上、通信キャリア、ベンダー、業界コンサルタントらの参加者を前にこの技術についての説明を行った。
「われわれが光ファイバネットワークで実現したメリットの一部は、RF(無線)環境でも再現可能だ」(Stevenson)
同プロトコルは、通信キャリアや研究機関、大企業など、広帯域のネットワークを保有しており、新規拠点の追加を考えているような組織にメリットをもたらすとされている。現時点では、光ネットワーク同士の接続を人手をつかった行おうとすると、数ヶ月もかかる場合もある。これに対し、JITなら数ミリ秒以内に自動的にリンクを確立できるとStevensonは説明する。
別のシグナリング・プロトコルであるGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)もまた、この問題を解決するものとして提案されている。だが、GMPLSでは光ファイバ接続の導入や取り外しに数秒〜数分かかってしまう。
提案者らによれば、JITではネットワークへの追加設定を行う際、目的の機器から認識されるのを待つ必要がないため、これまでより高速な処理が可能になるという。たとえば、ATM(Asynchronous Transfer Mode)やGMPLSなど多くのプロトコルでは、受信するトラフィックを監視する機器に対して、ある信号を送出し処理を開始している。そのため、送信者はデータ送出前に、それらの機器が受信可能状態かどうかの確認を行っておく必要がある。これに対し、JITではデータ送出時に接続を確立するためのメッセージを送信することで、確認待ちなしにデータ伝送が可能になる。
JITの唯一の欠点は、データの送出先が過負荷ぎみのスイッチ装置であったり、切断状態の光ファイバネットワークであった場合、そのデータが破棄される可能性があることだと、Stevensonは述べている。このようなデータ破棄が行われるとサービスが停止する可能性がある。
Stevensonは、波長変換などの技術を用いることで信頼性をアップできるとしている。波長変換を使えば、スイッチ装置に入ってくるトラフィックを、異なる波長のネットワークに対して送出することが可能となる。
研究分野以外では、物理学者らがJITを利用して、グリッドネットワーク上で大量のデータを送信しているとStevensonはいう。テラバイト級のデータを広域をまたいで転送することが必要な状況では、従来のIPルーティングを使うやり方だと、処理速度が遅すぎて、インタラクティブな接続を維持できないことが分かっている。
Stevensonによると、JITはネットワーク接続が高速に可能なことから、他の方式と比べて非常に効率的だという。米国防省は、ATD網(Advanced Technology Demonstration Network)にJITを採用している。この100%光ファイバを使ったネットワークでは同省に属する3つの施設を結んでいる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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