デジタル家電を無線でつなぐWPAN(Wireless Personal Area Network)を実現するための技術が注目を集めている。すでに実用化されているBluetoothや、最大480Mbpsの速度を持つウルトラワイドバンド(UWB)がその代表格だが、横須賀リサーチパークでは1Gbps超の高速通信を実現させようという取り組みも進んでいる。
情報通信研究機構(NICT) 横須賀無線通信研究センター 研究センター主管の小川博世氏は6月4日、都内で開催された周波数資源開発シンポジウムで講演し、高速無線通信技術「ミリ波WPAN」の標準化動向について紹介した。NICTは通信総合研究所(CRL)と通信・放送機構(TAO)が統合してできた独立行政法人だ。
情報通信研究機構 横須賀無線通信研究センター 研究センター主管の小川博世氏 |
WPANは無線LANに比べて伝送距離が短いものの、伝送速度が速く、電力消費量が少ないという特徴がある。
ミリ波WPANは60GHz帯を利用した通信技術で、通信速度が1Gbps以上(通信距離10m以上)という点が最大の特徴だ。小川氏によると、すでに実験では1.2Gbps〜1.4Gbpsの実行速度が確認されているという。「2Gbps以上を目指して標準化を進めていく。この点がUWBとの差別化になるだろう」(小川氏)
また、UWBに比べて既存システムとの干渉が起こりにくいことも利点という。UWBは3.1GHzから10.6GHzを利用するため、5GHzを利用するIEEE 802.11aなどとの干渉が懸念されている。しかしミリ波WPANが利用する60GHz帯は他の無線通信の周波数と離れているため、干渉問題が起こらないというのだ。
さらに60GHz帯は日本国内で免許が不要な点もメリットとして挙げられる。国内では59GHz〜66GHzは無線免許が不要なため、「いつでも(ミリ波WPANを利用した)ビジネスに参入できる」(小川氏)という。
現在はIEEE 802.15委員会内で物理レイヤー(PHY)に関する標準化が進められている。IEEE 802.15.3cとして2003年9月にInterest Group(分科会)を結成し、2004年3月にはStudy Group(研究会)に昇格した。参加企業としては、NECや沖電気工業、村田製作所のほか、IBM、Motolora、Texas Instrumentsなどがある。
今後は技術的な仕様を固め、2004年内にTask Groupへの昇格を目指すという。消費電力等の課題があるとしながらも、「2005年〜2006年の標準化を目指す」(小川氏)としている。
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