米Apple Computerが無線LAN規格「IEEE802.11a」に準拠する製品を開発しないことが明らかになった。家庭内/企業内の無線LAN規格として普及した「IEEE802.11b」の後継として登場した802.11aだが、今、その「a」を見限る企業が増えている。そんな流れにAppleも加わった。
米Appleのワールドワイド・ハードウェア・プロダクト・マーケティング副社長グレッグ・ジョスウィアク(Greg Joswiak)は米国時間1月8日、同社の新型ノートパソコンでは新技術の「802.11g」をサポートすると発表した。そして同時に、Appleが802.11a準拠製品の開発を計画していないことも明らかにした。「802.11aは意味がない。802.11aの市場が存在するとは考えられない」(同氏)という。
802.11aは、300フィート(約91メートル)離れた距離にある機器同士で通信できる。その最大データ伝送速は54Mbpsで、802.11bに比べて5倍速い。しかしそこには大きな問題がある。今や世界中で3500万台の機器が出回っているという802.11bとは互換性がないのだ。
ユーザーが802.11bから802.11aに移行する場合、アクセスポイントに加え、ノートパソコンに装着する通信カードも買い換えなければならない。ユーザーはそれをすべてのマシンに対して行わなければならず、そのコストはばかにならない。ジョスウィアクは「移行コストは、家庭や企業の規模が大きくなればなるほど増大していく」と指摘する。
一方の802.11gの場合、移行に必要なのは1台のアクセスポイントだけ。かかる費用は150〜200ドルといったところだ。
また、もし802.11aが普及すれば、新たな問題も生まれる。すでに存在する何百万人という802.11bユーザーとの間でどう折り合いを付けていくのか、という問題だ。「2つの異なるネットワークを普及させるべきか否か、という議論が沸き上がるだろう」とジョスウィアクは指摘する。
アナリストらによると、現在、多くのメーカーが802.11g準拠製品の開発・製造にあたっているという。802.11gは802.11aと同等の高速通信を実現するうえに、すでにパソコンやPDAに802.11bの通信カードを装着しているユーザーなら誰でもすぐに利用できるというメリットもある。
市場調査会社Forward Conceptsのアナリスト、ウィル・シュトラウス(Will Strauss)は、「市場ではもはや答えが出ている」と指摘する。「2002年に数千万個出荷されたWi-Fiチップのうち、802.11a向けのチップの数は10万個に満たなかった。802.11aの市場ニーズはほとんどない」
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