ディー・エヌ・エーは11月1日、2011年3月期第2四半期(2010年7月1日〜9月30日)の連結業績を発表した。決算発表会では代表取締役社長兼CEOの南場智子氏がDeNAの世界戦略を語った。
南場氏は世界のソーシャルゲームのリーダーとして、DeNA、Facebook、Zyngaの3社を挙げた。売上で比較すると、DeNAが13億ドル、Facebookが10〜20億ドル(DeNA試算)、Zyngaが6〜10億ドル(DeNA試算)だという。売上は同規模だが、推定ARPU(1ユーザーあたりの月額利用料)はDeNAがFacebookの30倍、Zyngaの15倍と収益性では引き離しているとの見方だ。
事業領域を比較すると、DeNAはソーシャルネットワーキングサービス(SNS)とゲームを提供しているが、FacebookはSNSのみを、Zyngaはゲームのみを提供している。ユーザー同士の関係性では、DeNAのユーザーはネット上でのみ交流するバーチャルな関係、Facebookは日ごろから交流のあるソーシャルな関係。サービスの対応デバイスはDeNAがモバイル先行であるのに対し、FacebookとZyngaはPC向けSNSがメインだ。
つまり、海外にはスマートフォンや携帯電話から利用するバーチャルな大手ゲームコミュニティは存在しないことになると南場氏は述べる。DeNAはすでに世界のソーシャルゲーム市場において独自の位置づけを占めているとの認識だ。
さらにDeNAは2014年にはスマートフォンが世界で20億台普及すると予想している。モルガン・スタンレーの調査によれば、スマートフォンの出荷台数は2012年にPCを逆転し、同時期にフィーチャーフォン(一般的な携帯電話)を逆転する可能性があるという。iPhoneをはじめとしたスマートフォンユーザーは携帯端末利用者の平均以上に、ゲームやSNSなどのモバイルコンテンツを利用する傾向にあるというデータもある。
DeNAはここに目をつけ、世界のスマートフォン向けゲームコミュニティに狙いを定める。重視するのはiPhoneとAndroidだ。現在のスマートフォンのゲーム市場について南場氏は、「大手がまだ実績を出しておらず、混沌としている」「ほとんどのゲームがソーシャルな要素を備えていない」「コミュニティを持つ競合が不在」と分析した。よって、DeNAが存在感を示す余地は十分にあるという。
「現在のiPhone向けアプリには、App Storeのランキングを上げるしか顧客獲得手段がない。だがコミュニティを持つと、招待機能のようなバイラル効果があったり、ゲームユーザーがコミュニティに定着したりする。コミュニティのあるなしでプロモーションコストは変わってくる。なかでもバーチャルコミュニティのパワーは大きい。実名のリアルなコミュニティはリアルな人間関係の枠の中の、さらにアクティブな人たちで遊ぶ。複数のゲームを移っていくなかでユーザーが縮小し、リアルの枠から広がらない。バーチャルなコミュニティだと、新しいゲームに前のゲームから友達を誘うこともできるし、そこで新しい友達を作ることもできる。プレイヤーが広がっていく。ニッチなゲームが好きで、リアルな友達には仲間がいなかったとしても、バーチャルなコミュニティなら対応できる。バーチャルだからこそ、ユーザーを拡大できる」(南場氏)
リアルな関係を主軸とするFacebookの存在は気にしていない。南場氏は「これまでもミクシィと共存しつつ、ゲームプラットフォームとしては優位性を維持してきた。Facebookが直接の競合になるとは思っていない」と話した。
DeNAはすでに海外のiPhone/iPod touchユーザー向けに、モバゲータウンをベースにしたアバターコミュニティ「MiniNation」を提供してきた。その結果、「htmlベースでネイティブアプリと同等の魅了的なゲームを構築することは困難」であるとし、今後はアプリケーションの形式でサービスを提供していく方針を固めた。だが、課題はOS間、Android端末間の差が大きく、アプリ開発の難易度が高いことにあるという。そこで開発を容易にするゲームエンジンが必要となり、買収に乗り出したのが米国のソーシャルゲーム会社、ngmocoだ。
DeNAは10月12日、連結子会社のDeNA Globalを通じて、スマートフォン向けソーシャルゲームアプリを開発するngmocoを100%子会社化すると発表した。買収金額は最大で4億300万ドル(約342億円)になるという。
「ゲームコミュニティ、ソーシャルゲームのラインアップ、マルチプラットフォーム対応の開発エンジン、これらを進めるマネジメントチームが早急に必要だったが、すべて揃っていたのがngmocoだった」と南場氏は語る。
ngmocoはバーチャルなゲームコミュニティ「plus+ Network」を保有しており、一度にiOSとAndroidの双方にゲームを展開できるゲーム開発エンジン「ngGame」(仮称)も現在構築中だ。iPhone向けに提供しているソーシャルゲーム「We」シリーズはiPhoneアプリのなかでは最もソーシャル性があると南場氏も評価する。「願ってもない買収だった」という。
海外でplus+ Networkというスマートフォン向けソーシャルゲームプラットフォームの上に、日本国内で成功したソーシャルゲーム、ngmocoのソーシャルゲーム、国外パートナー企業のソーシャルゲームを提供していく。日本のユーザーには携帯電話あるいはスマートフォン向けモバゲータウンを使ってもらう。ngGameエンジンを使えば、一度の開発でiPhoneとAndroid、モバゲータウンとplus+ Networkに対応したソーシャルゲームができあがるという。
「ソーシャルゲームのグローバルな市場規模は、2014年にスマートフォンの普及台数が世界で20億を超えると予想されるため、現在の日本の約20倍のポテンシャルがある。ただ国内と国外ではARPUの違いがある。ZyngaとDeNAの差は大きくミニマムで15倍。実際はそれ以上だと思うが、要因はコミュニティベースの有無、PCとモバイルなどにある。海外のARPUが日本の半分だとしても10倍の規模はある。DeNAは売上高が1000億円を超える企業なので、1兆円の可能性があるということ。その可能性が目の前に提示されている。あとはそれをどうやって取り込んでいくかだ」(南場氏)
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