「複製機能も対象に」--Culture Firstが私的録音録画補償金に提言

 音楽や映像の権利者85団体によって構成される「Culture First」は11月14日、私的録音録画補償金制度について、従来の仕組みとは異なる新たな補償制度創設に向けた提言を発表した。

 提言の柱となるのは大きく2点。1つ目は「補償の対象は私的複製に供される複製機能とする」ことで、法令で対象端末が指定されていた従来保障制度と異なり、機器、媒体、サービスを問わず私的複製に供されるあらゆる複製機能を補償対象に含むとした。

 2つ目は「補償の支払い義務者は複製機能を提供する事業者とする」こと。従来制度においては対象はあくまで私的複製の行為者(一般ユーザー)であり、機器や媒体の提供者はあくまで支払い義務を肩代わりしている形となっていたが、今回の提言では私的複製によって利益をあげている事業者の支払い義務を明確に名指ししている。

 新たな補償金制度については、文化審議会著作権分科会「法制・基本問題小委員会」の下に「著作物等の適切な保護と利用・流通に関わるワーキングチーム」が設置されるなど、問題の解決に向けた取り組みが整いつつあった。今後、今回の提言内容を著作権利者側の統一見解とし、ワーキングチーム内などで積極的に意見していく方針だという。

 私的録音録画補償金制度の見直しについては、2003年4月に行われた「文化庁・私的録音補償金制度見直しの検討」を皮切りにさまざまな場で議論されてきた。これは技術革新にともなう録音・録画機器の多様化に、制度が定める対象機器の選定が追いつかなくなったためで、普及が進んでいた各種デジタル系録音・録画機やHDD、PCなども対象外となっていた。

  • 日本音楽著作権協会・菅原瑞夫理事長

 制度の機能停止が決定的となったのは2012年11月、私的録画補償金管理協会(SARVH)と東芝で争われたデジタル放送用録画機の補償金支払い拒否に関する訴訟が東芝側勝利によって終結したこと。これにともない、コピー制御のかけられた現行デジタル放送下における録画補償金は0円となり、制度は事実上崩壊した(録音についてはCD-Rなど一部で残存)。

 今回のCulture Firstによる提言は、権利者・クリエイタの立場として改めて私的録音録画に対する補償制度の必要性を訴えるとともに、録音・録画機器の販売やサービス提供によって利益をあげる事業者に対して明確な責任を訴えるものだ。権利者への補償なしで私的録音・録画に関するビジネスで利益をあげることを認めない、というのが大まかな主張だ。

 また、発端となったメーカーの支払い拒否について「(ユーザーを支払い義務者と認めつつ実質メーカーが支払いを代行するという)大人の解決で成り立っていた制度において、その大人としての責任を放り投げられた」(日本音楽著作権協会・菅原瑞夫理事長)と話すなど、訴訟終結後においても怒りは収まっていない様子。

 実際、訴訟においては現行法令の解釈においてデジタル録画機を対象外としたのみで、私的録音録画補償金制度そのものが否定されたわけではない、という事実も動きを後押ししているものと見られる。

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