通信のゆくえを追う

そのサービスは誰のため?--キャリア中心の開発体制が日本のメーカーをダメにした

菊地泰敏(ローランド・ベルガー)2013年07月22日 07時30分

 連載1回目「競争か協力か--通信キャリア、OTT陣、端末メーカーの微妙な関係」に続く、2回目の今回は、端末について考えてみたい。

 連載第一回でも述べた通り、"端末"という言葉からして、通信事業者(キャリア)が中心で末端にユーザーが位置付けられ、そのユーザーが使うデバイスという概念である。

 これは、歴史を振り返ると、電話サービスを利用するために電話加入権を購入し(施設設置負担金を支払い)自宅まで電話線を敷設してもらうとともに、電話(黒電話)を設置してもらうという、そういう時代の名残と言えよう。固定電話・携帯電話とも、キャリアからレンタルするのではなく、自分で自分の好みの端末を購入して利用できるようになったのは、そう遠くない過去なのである(固定電話が1985年、携帯電話の場合1994年)。

 そもそも黒電話の時代は、電話につながるコードは壁から直接延びており、今のようにローゼットで簡単に抜き差しできるようなモノではなかった。また、携帯電話の嚆矢(こうし)とも言える自動車電話も、当初の端末は電電公社からのレンタル品であり、非常に高額であった(20万円の保証金と別途レンタル料)。

 さて話を現代に戻そう。

 固定電話はさておき、携帯電話については、買い換えまでの期間は伸びる傾向にあるものの、3年程度で買い換えるというユーザーが多い。買い換えの際には、自分のライフスタイルに合わせ、気に入った端末を選んで購入する。選ぶ際には、どのような機能で、どのような外観か、どこのメーカー、そしてどのキャリアで利用可能かという要素が、主な選択基準であろう。

 一部の国(例えばインドネシア)では、ユーザーはまず気に入った端末を購入し、その後、気に入ったキャリアのSIMカードを購入して利用する。端末とキャリアは独立なのである。しかしながら、日本をはじめ多くの国では、キャリアが通信サービス(回線)と併せて端末を販売しているため、そのままでは他のキャリアでは使うことができない(いわゆるSIMロックである)。

 キャリアが端末の仕様を決定するとともに、その開発費を負担し、端末メーカーはその仕様に沿って開発を行い、キャリアに納める。端末メーカーにしてみれば、確実に売り上げを見込むことができ、両者の蜜月の関係が続いた。

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