ソニー、2012年3月期は5200億円の赤字--「聖域なき改革を断行」

 ソニーは4月10日、2012年3月期の連結業績見通しを下方修正した。2012年3月期の業績下方修正は4回目となり、同社始まって以来の最終赤字規模になる。

 2月の公表値に比べて、売上高の6兆4000億円、営業利益950億円の赤字、税引前利益の1150億円の赤字は据え置いたものの、当期純利益を2200億円の赤字から5200億円への赤字に修正。3000億円悪化した。2011年度第4四半期(2012年1~3月)で、米国などにおける繰延税金資産に対し、評価性引当金を計上することなどにより、追加の税金費用で約3000億円を計上することが理由としている。

  • 繰延税金資産と評価性引当金に関する説明。数字は便宜上のものを使っている(1)

 同社は「追加の税金費用の計上は、現金支出を伴わず、ソニーの連結営業損益やキャッシュフローに影響を及ぼすものではない」(加藤優執行役 EVP CFO)と説明する。2012年3月期の連結業績は5月10日に正式に発表するという。

 2013年3月期の連結営業損益見通しについては、2月時点で2000億円の黒字を目指すとしていたが、為替などの影響を反映し、約1800億円の黒字を見込んでいることを示した。

  • 繰延税金資産と評価性引当金に関する説明。数字は便宜上のものを使っている(2)

 今回の下方修正は、評価性引当金の計上が理由となっている。

 ソニーは連結決算で米国会計原則に準拠。米国の統括持ち株会社は子会社とともに米国連邦税に関して連結納税申告を行っている。ここにおいて、ソニーは、税務管轄ごとに繰延税金資産の回収可能性を評価し、評価性引当金計上の必要性があると判断したという。

 繰延税金資産の回収可能性を評価する上では、数年間にわたる累積損失を重要なマイナス要因とみなしており、米国の連結納税グループは、2012年3月期を含む直近数年間で累積損失になる見込みであるため、ソニーは米国の連結納税グループの繰延税金資産に対して、現金支出を伴わない評価性引当金を計上することにしたという。この評価性引当金の計上は、今回の追加の税金費用のうちの約8割を占めるという。

写真3 執行役 EVP CFOの加藤優氏

 いわば将来の黒字転換を前提として、税金負担を軽減するために計上するものであり、業績悪化などを背景に繰延税金資産を取り崩したのが下方修正の主因となる。

 ソニーは、一部の関係会社間取引における移転価格に関して、2012年に入ってから行われた日米間の事前確認制度の状況にもとづき、税金費用の見積りを修正。この結果、日本と一部の海外子会社間の損益を再配分する可能性が高いため、追加の税金費用を計上することになるとしている。

写真4 業務執行役員 SVP経理部門長の長坂武見氏

「事前協議の申請をしており、その結果を予想して会計上の引き当てをしているが、直近の政府間協議が想定していた結果とは違うものになっている。損失を出している国に対して、損失が調整され、なくなると推定していたが、ある程度の損失を出さなくてはならないということになり、その国における評価性引当金を、繰延税金資産に対して引き当てなくてはならなくなった」(業務執行役員 SVP経理部門長の長坂武見氏)

 期初に営業利益で2000億円、最終利益で800億円の黒字を見込んでいたが、加藤氏は「5200億円の最終赤字は、経営としては重く見ている。震災の影響、超円高の為替の影響、タイの洪水被害、厳しい市況など多くの要因がある。収益の回復に向けて、経営体制の変更にも取り組んでいる。聖域なき改革を断行していく」と説明する。

 その上で「テレビ事業の赤字は経営の一番大きな課題。2013年度の黒字転換に向けて、大きくステップを踏み出す。2011年度はパネルの調達でサムスンとの合弁契約を解消し、収益の改善にも取り組むことを発表した。これは2011年度第4四半期からすでに効果が表れている。2012年度に向けてはいいスタートが切れている」と述べた。

 また加藤氏は「米国子会社のうち、映画や音楽などのエンターテインメント分野では実績が出ており、収益も安定しているが、コンシューマエレクトロニクス分野は厳しい競争にさらされている。ゲーム事業は厳しい時期もあったが、収益を改善する方向に向いている。ネットワーク事業は立ち上げ時期であり、収益を大きく上げるところには至っていない。エンターテインメント以外の分野が想定したよりも成長していない」などと語った。

 一部報道でソニーが1万人の人員削減を計画していることが取り上げられているが、これに関して「ソニー側から発表したものではない」と前置きしながらも、「収益改善に向けて、さまざまな施策を打っていく。構造改革や事業ポートフォリオの見直しなどに取り組んでいることは事実であり、それに伴った動きがある。聖域なき改革を断行していく、ひとつの側面である。中小型液晶およびケミカル事業に関しては、ジョイントベンチャーの設置や譲渡によるものであり、人員削減というよりは、会社からの切り出しによって成長を模索するもの」などとした。

 ソニーは4月12日に平井一夫社長による経営方針説明を行う予定で、「こうした内容(=人員削減)などについても触れることになると思う」(加藤氏)とした。

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