スマートフォンの普及にともない、急増するモバイルデータトラフィックが通信キャリアの悩みの種になっている。7月には米最大手の通信キャリアVerizon Wirelessが、スマートフォン向けの定額制データ通信プランを廃止し従量課金制に移行したことでも話題になった。
日本では今のところ、Wi-Fiなどへのオフロードや帯域制限を実施することで、各キャリアともに定額制を維持しているが、今後もスマートフォン利用者は拡大し続けることが予想され、さらなるトラフィック対策を求められることになるだろう。
こうした中、KDDIがトラフィック対策として2012年4月に導入しようとしているのが「EVDO Advanced」という技術だ。基地局の混雑度合いをリアルタイムに監視し、混雑している基地局の範囲内にある携帯端末のデータ通信先を、隣接する基地局に切り替えることで負荷を分散する。
同社によれば、EVDO Advancedにより従来の約1.5倍のデータ収容が可能になり、ユーザーの体感スループット(通信速度)も平均2倍に向上するという。KDDI技術企画本部モバイル技術企画部通信品質グループリーダー担当部長の大内良久氏は「各社が新たに基地局を設置できずに苦しんでいる中で、(EVDO Advancedは)今あるもので速度を上げる技術」と説明する。
Wi-Fiによるオフロードの取り組みも推進しており、11月24日には公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」のスポット数が5万カ所を突破した。au Wi-Fi SPOTは、パケット定額サービス「ISフラット」などに契約しているユーザーのauスマートフォンから無料で利用できる無線LANサービスだ。KDDIでは、2012年3月末にはau Wi-Fi SPOTを約10万スポットまで拡大するとしている。
またWi-Fi通信エリア内で、混雑などが原因で通信ができなくなる場合がある。このような場合に、KDDIでは通信状況を認識し、常に良好なWi-Fiアクセスポイントや3Gに自動的に切り替える「スマートWi-Fi/3G切替」技術を提供している。「Wi-Fiをご利用いただく以上は、常に高品質な環境を提供するようにしている」(大内氏)
こうした取り組みの一方で、これまでソフトバンクモバイルが独占販売してきたiPhoneの最新モデル「iPhone 4S」が、10月にauからも発売された。両社のiPhone 4Sの最も大きな違いは、ソフトバンクモバイル版がW-CDMA HSPA方式、au版がCDMA EV-DO Rev.A方式の通信規格を採用していることだ。
CDMA方式は仕様上、音声通話とデータ通信を同時に行うことができないため、W-CDMA方式の方が優れていると見る向きもある。これに対し大内氏は、CDMA方式だからこそ高品質なサービスを提供できると反論する。「W-CDMA方式は、同じ周波数で音声通話とデータ通信を行うため、お祭りやイベントなどでデータトラフィックが急増すると音声品質に影響がでてくる。一方で、CDMA方式はトラフィックの影響に左右されず安定した音声品質を確保できる」(大内氏)
また、ソフトバンクモバイル版が下り最大14.4Mbps、au版が3.1MbpsとされているiPhone 4Sの通信速度についても、「実数だけでなく体感速度が重要」と強調する。同社が独自に山手線や新宿のアルタ前など、比較的混雑する場所を選んで実施した調査によると、スループットやウェブ接続時間、ページ切り替え速度において、いずれもau版がソフトバンクモバイル版のiPhone 4Sと同等、またはそれ以上の数値を記録したという。
この結果について大内氏は、携帯端末からサーバまでの各種ノードの最適化など、さまざまな細かいチューニングを行うことによって「約3Mbpsしかないauがソフトバンクといい勝負ができている」と説明。現在は未対応の「iMessage」や「FaceTime」などの機能にも順次対応していくことで、同社のiPhone 4Sの価値を高めていきたいとした。
各社のスマートフォントラフィック対策
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