KDDIが考えるポストケータイ時代の新しい10年

鳴海淳義 (編集部)2011年05月25日 19時04分

 ワイヤレスやモバイルの最新技術とサービスに関する国内最大級の展示会「ワイヤレスジャパン2011」が東京ビッグサイトで開幕した。開催期間は5月25日から27日まで。初日は、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏が「KDDI 新たな10年への出発」と題する基調講演を行った。

KDDI代表取締役社長の田中孝司氏KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

 田中氏は2000〜2010年の10年間を、「携帯電話の時代」「3Gと定額の時代」「なんちゃってインターネットの時代」と総括した。ネットワークのスピードやユーザーインターフェース、端末の性能など、現在と比べるとあらゆる面で制限があったが、そのような状況下でモバイル市場は花開いた。

 ではこれからの10年はどのような時代になるのだろうか。「ユーザーインターフェース」「携帯電話の性能」「ネットワークの速度」という3つの課題が解決されたいまこそ、新たな高度成長が生まれる時と田中氏は予測する。

 まずユーザーインターフェースはiPhoneが革新した。田中氏は「iPhoneを初めて見たときは感動した。昔はテンキーや上下左右でカーソルを合わせるしかなかった。タッチパネルを使うことで、そんな制限を取り払ってくれた。上下左右のカーソルを動かして、5のキーを押して拡大していた時代を思うと、iPhoneの発明は素晴らしい。とんでもない改革をしてくれた」と話す。

 携帯電話の性能も常に向上している。スマートフォンには高速のCPUが載るようになり、液晶も高精細化が進んでいる。有機ELといった新技術も採用されている。

 ネットワーク速度は、2000年頃は下り64Kbps程度しか速度が出なかったが現在はEV-DOマルチキャリアで下り最大9.2Mbpsまで出るようになった。UQ WiMAXは下り最大40Mbps、2012年12月から始めるLTEでは下り最大75Mbpsのスピードが期待できるという。

 これら3つの課題が解消されたことで、「PCインターネットでできることは、モバイルでも完全にできるようになる」と田中氏は断言した。

 ただ、そのときに新たな課題となって現れるのが、トラフィックの爆発的な増加への対策と新しいビジネスモデルである。

 田中氏によれば、携帯電話からスマートフォンに機種変更すると、1加入あたりのトラフィック量は10〜20倍に増えるという。そうなるとスマートフォンが主流になっていると予想される2015年には、トラフィック量は現在の18〜20倍に膨れ上がると予想される。

 「しかし、それを支える電波の帯域はない。2012年の後半からネットワークがオーバーフローする。まずはそれをなんとかしないといけない。2015年は3分の1も吸収できないだろう。ネットワークはある日突然遅くなる。いまでも局所的にパケットがつながらなくなることがあるが、それが全域で発生することになる」(田中氏)

 大量のトラフィックを固定ネットワークなどに逃がす対策を「オフロード」と呼ぶ。現在、KDDIが考えているのは、「マルチデバイス」「マルチユース」「マルチネットワーク」の“3M戦略”というもの。このうちマルチネットワークとは、トラフィック対策にWi-Fiやケーブルテレビを積極的に使うことである。

 すでにhtc EVO WiMAXという端末は下り最大40MbpsのWiMAXやテザリングを使えるようになっている。また「au Wi-Fi SPOT」というWi-Fi接続サービスを今夏に開始する予定。3G回線との自動切り換え、IDとパスワードを必要としない設定など、使いやすさを第一に考えてサービスを設計しているという。Wi-Fiスポットは2011年度末までに約10万スポットに拡大する計画だ。

 田中氏の考える「新しい10年」とは、PCインターネットでできることが、モバイルでも完全にできるようになる時代である。そのときのための準備は着々と進んでいるようだ。

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