日本人にとって日本製のアニメーションおよび、ゲームコンテンツは、世界中で認知されているというのが定説。
しかし、ハーバード大学の准教授が、数年前に日本のアニメ産業の調査に来た時に、クールジャパンの象徴としてアニメがあるにもかかわらず、国立大学で人材を育成するカリキュラムがないことに驚かされたといっていた。
また、北米、欧州などでのアニメ、ゲーム人気が取りざたされているが、もし一大ブームになっていればアニメ、ゲーム企業は大幅な増収増益になっているはずである。
アニメ制作事業者の団体「日本動画協会」が毎年発表している事業者の収益構造比率をみると、海外からの収入は全体の売上の6%程度となっている。一方、大手ゲームメーカーの海外売上比率も多くて20%、北米、欧州での日本製ゲームの平均的売上は10%弱といわれている。
このことからもどうやら人気といわれているアニメ、ゲームであるが日本と世界とでは温度差があるのではないだろうか。
ところで、新たなフロンティアとして期待が高まるアジアマーケットであるが、どうにもならない問題を抱えている。氾濫する海賊版コンテンツである。
特に中国はコピー天国といわれ、その被害は莫大な金額になると試算されている。人気がある日本のアニメ、ゲームの実態はどうなっているのだろうか。
先日、上海へ行ったときのことである。デパートの地下街で日本のアニメキャラクターのグッズがたくさん売られていた。ショーケースには「ドラゴンボール」、「ドラえもん」、「ワンピース」など日本の人気アニメキャラクターがそろい踏み。現地の人に聞いてみると、みんな日本のアニメが大好きだという。
13億人の中国で、ここまで日本のアニメが浸透していればアニメ関連企業は大儲けしているはずである。商品のパッケージをよく見てみると、確かに本物らしい、日本から買い付けてきたのであろう。
そしてもう1つ手に取ると、おかしなところに気がついた。スタジオジブリが「スタジオジブソ」になっているのだ。「ソ」とは…。これは本当に良くできている。
実際、日本のアニメは本当に中国で浸透しているのだろうか。
JETRO上海の調査資料によると、中国では「ドラえもん」が92.8%の人に認知されておりダントツのトップ、あのミッキーマウスを上回っている。そして、上位15位の中に日本のキャラクターは何と10作品もランクインしている。
しかし疑問が残る。中国では十数年前より日本のコンテンツに関して厳しい規制が掛けられているはず。よってアニメのテレビ放映はもちろんのこと、マンガ、ゲームソフトなどについても容易に当局から中国国内への参入許可が下りない状況なのだ。
ではどうして放映されていない「ワンピース」などのフィギュアが店頭で人気になっているだろう。まして日本のマンガ本も中国では流通が認められていないはずである。
お察しの通り、中国では動画はインターネットを通じて視聴する習慣が根付いている。特に若い層ではメディア視聴はテレビよりもPCが上。雑誌や小説などもPCや携帯端末で視聴することが多いとのこと。ではどういう仕組みになっているのだろうか。
続きは次回のコラムにて。
*今回のコラムは筆者が「ビジネスファミ通」に寄稿したものを抜粋
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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