一般社団法人ブロードバンド推進協議会が5月12日、シンポジウム「『光アクセス100%社会への展望』〜光の道構想がもたらす国民生活と産業の進化〜」を開催した。財団法人インターネット協会副理事長の藤原洋氏が司会を務め、社団法人日本インターネットプロバイダー協会副会長兼専務理事の立石聡明氏、一般社団ブロードバンド推進協議会理事でヤフー執行役員オペレーション統括本部長兼運用技術本部長の西牧哲也氏、特定非営利活動法人日本データセンター協会理事で東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎浩氏が地域活性化と光アクセス100%化をめざす「光の道」構想について意見を交わした。
最初に登壇した立石聡明氏は、社団法人日本インターネットプロバイダー協会副会長であると同時に、徳島県で1995年夏から地域プロバイダーを運営している。地方でのIT化を担ってきた立場から、高速通信網の整備が地域活性化にどのような影響を及ぼすのかを語った。
立石氏は、地方では道路ができると集落が消えてしまうと語る。「生活道路ができると地域が活性化するのではなく、都市部へ簡単に移動できるようになり、地域から人が出て行ってしまう」(立石氏)
地方を便利にし、活性化するはずの道路が、人を都市部へと吸い上げる「ストロー現象」。これが「光の道」でIT分野において起きるのではないかと、立石氏は危惧する。地域でITリテラシーを持つ人を育てると、みんな都会に出て行ってしまうのだ。「光の道が道路と同じ効果をもたらしては、過疎化を推進するだけ。地方社会の活性化に生かせる道でなければ、ない方がましだ」(立石氏)。
西牧哲也氏は、「情報立国による新たな成長」というタイトルで、4月23日にソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が行った講演のダイジェストを紹介した。
この主張は、日本中に残っているメタル(銅線)を引きはがし、100%光ファイバに置き換えなければならないというもの。メタル回線の維持費用は10年間では3兆9000億円かかっているが、完全に光ファイバ化すれば、それがゼロになるという。また、現在1件あたり12万円かかっている光ファイバの設置工事費も、地域ごとに一斉工事をすれば1件あたり3万円まで値下げができ、各家庭では、メタル回線とほぼ同額の月額1400円程度で光ファイバを利用できるとした。
日本中が高速回線で結ばれれば、たとえば小中学生に無償で電子ブック端末を配布し、教材をクラウド上に置いて利用する電子教科書が実現できる。また、医師や看護士に電子カルテ端末を配布し、カルテをクラウド上で共有することで誤診が減り、遠隔医療ができるといった可能性についても語った。
シンポジウムの後半には「光アクセス100%社会への展望」というテーマで、インターネット協会副理事長の藤原洋氏をモデレータに立石聡明氏、西牧哲也氏、そして東京大学本郷キャンパスからネット中継で江崎浩氏が参加し、パネルディスカッションが行われた。
藤原氏は総務省ICTタスクフォースの一員として、「現在30%の光ファイバー利用率を15年までに100%へ上げる」という使命を原口一博総務大臣から負っていることを述べ、パネラーの意見を求めた。
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