インターネットが普及した今、メディアやマーケティングのあり方はどう変わっていくのか。4月5日に開催された有志イベント「BRIDGE 2010 April」では、2010年初に話題を集めた書籍の著者や監修者3人が集まり、それぞれの立場から語った。
登壇したのは、「コカ・コーラパークが挑戦する エコシステムマーケティング」の著者の1人である日本コカ・コーラ インターラクティブ・マーケティング統括部長の江端浩人氏、「フリー <無料>からお金を生み出す新戦略」の監修・解説を務めたインフォバーン代表取締役CEO小林弘人氏、「次世代メディアマーケティング」の監修を務めたスケダチの高広伯彦氏の3人。ナビゲーターは、アジャイルメディア・ネットワーク代表取締役社長の徳力基彦氏が務めた。
ネットの普及によって、さまざまなもの境界線が溶け、価値観が変わってきた。たとえば、日本コカ・コーラは広告代理店のクライアントにもなる企業だが、同社が運営するユーザー向けサイト「コカ・コーラパーク」は、広告枠を販売する“メディア”として機能している。ほかにも、AmazonのKindleやAppleのiPadが登場して電子書籍の市場が拡大し、今後は個人が出版社を通さずに自身の著作を世に出せるようになりつつある。
徳力氏はこういった背景を説明した上で、メディアやマーケターといった立場でネットを黎明(れいめい)期から見てきた3人に、「ネットの普及による一番のインパクトは何か」と尋ねた。
小林氏は、「ユーザーが増えたこと」と語った。日本でインターネットの商用接続が本格化した1994年、そのユーザー数は3万8000人ほどだったという。そんなニッチメディアでしかなかったネットだが、ユーザーの母数が増えたことによってこそ、UGC(User Generated Contents)が生まれるなど、可能性が広がったと説く。
江端氏は「メールとTCP/IP」を挙げる。当時商社に在席していた江端氏。ネットが普及するまでテレックス網を配備して通信していたことを振り返りつつ「これを個人でできるようになった仕組みやパケットシステムはすごい」と語った。
「テキスト、画像、動画、全部がデジタルの共通フォーマットになったことが大きい」と語るのは高広氏だ。これまで別々のフォーマットで扱ってきた各種のコンテンツを1つのプラットフォームで扱えるようになったことで、PCや携帯電話など、さまざまな端末で利用できるメディアを作ることが可能になったことこそが最大のインパクトだとした。
では、今後10年でネットに訪れる大きな変化は何だろうか。これについて江端氏と小林氏は、アナログな技術や業界との融合が進むと語った。江端氏は「たとえば人間の脳は化学反応で情報を判断するが、そういった技術が入ってくるのでは」と期待し、小林氏は米国で成功したIT起業家らが製造業に参入している状況を説明した。
また、それぞれの立場から今後のネット活用について、「コスト効率はいいがネットを使えばいいというものではない。今は消費者の目が向いているからツールとして使う。現状は自社媒体を持つと効率がいい」(江端氏)、「チャットやTwitterなど活字のコミュニケーションは潤沢になっている。ユーザーはコモデティ化した情報にお金は払わないので、メディアが新しい希少なものに変わらないと仕方ない」(小林氏)、「ネットほど広告ビジネスへの参入障壁が低かったものはない。YahooもDoubleClickもGoogleも、広告業界以外から生まれている。広告代理店の人たちは(彼らを)『取り込みたい』と思うが、実際には広告業界以外から生まれていることをとらえないといけない」(高広氏)とした。
ここで徳力氏が江端氏に、同氏が手掛けるコカ・コーラパークの運営に求める人材を尋ねたところから、「インタラクティブ」という考え方の重要性に話題が移った。
江端氏は理想の人材について「戦略的に新しいものを立ち上げるということを理解できる人。肩書きとしては『インタラクティブマーケティングマネージャー』が必要」とコメント。
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