富士通前社長の野副州旦氏が同社に対して社長辞任の取消を求めている問題で、富士通は3月6日、野副氏の相談役解任と、辞任取消通知書に関する一連の報道についてコメントを発表した。
これを受け、野副氏側の代理人で畑・植松法律事務所の畑敬弁護士がZDNet Japanの取材に応じ、今回の発表について見解を述べた。
野副氏の相談役解任は、本人に弁明の機会が与えられず、解任理由も不明であるとする。
野副氏側は2月26日、名誉回復の場を求め、富士通に臨時取締役会の開催を要求する文書を送付。富士通は短期間で臨時取締役会の日程を調整することが不可能とし、回答期限の3月3日付けで代理人を通じ開催拒否の旨を通達した。富士通は3月6日に臨時取締役会を招集し、野副氏の相談役解任と辞任取消要求の拒否を決議している。
野副氏が望んでいた取締役会は招集されなかったが、一方で6日の臨時取締役会は開催された格好だ。野副氏側によれば、今回起こした行動の最大の目的は名誉回復。野副氏側は取締役会で弁明する機会を求めており、なぜ自身を6日の臨時取締役会に呼ばなかったのかとしている。
野副氏側によれば、今回行動は起こすものの、基本姿勢としては会社に自浄作用を求めていた。それが突然このような文書を発表され遺憾であるとしている。
富士通は野副氏側の辞任取消要求に関する一連の報道に対し、「一部報道について」と題したコメントを発表している。
富士通の説明によると、2009年2月頃、野副氏と親交の深い人物が代表取締役を務める企業が、野副氏が担当するプロジェクトの一部に関与。この企業グループには好ましくない風評があるため調査結果、富士通は同社の行動規範からみて関係を持つことがふさわしくないと判断。取締役と監査役が野副氏に注意したとする。
しかし、富士通は野副氏がその後も当該企業と関係を継続していたと判断し、取締役と監査役が事前に取締役会メンバーの過半数の同意を得た上で、2009年9月25日、野副氏に事情聴取と弁明の機会を設けた。この場で野副氏には当該企業との関係が調査結果どおりであれば代表取締役社長を解職すること、しかし野副氏に辞任の意向があればこれを受け入れることが伝えられたという。
この点について野副氏側は、「事前に取締役会メンバーの過半数の同意を得た」としても、取締役会での討議ではなく密室での解職。法的効力がないとする。また、「弁明の機会」についても、解職を討議するのは取締役会であり、そこで弁明の機会を与えられなければ意味がないとしている。
野副氏は事情聴取の場で、辞任しなければ会社が上場廃止になると解職を迫られた。当該企業の風評が事実だった場合、富士通に多大なリスクが発生するという点が争点になった模様で、野副氏はその場で辞任を受諾。その結果、取締役会に参加する資格を失い、続いて開催される定例の取締役会に参加することができなかった。野副氏側はこの解職の手続き自体に大いに問題があるとしている。
また、野副氏の辞任理由とされた「病気療養」について、富士通は「野副氏自身が体調を崩していた事実もあったことから」と撤回はしなかった。
事実、野副氏側は辞任後、通院していたことは認めている。しかし、通院は富士通が指示したものとされ、また病院では肩こり解消のために針をやっていた程度。いわゆる「治療」ではなく、病名も診断書も存在しないという。また、通院には富士通の者が付き添った可能性もある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス