「ドラゴンクエストIXは中古品の出回っている量が通常の半分から3分の1程度になっており、うまく制御できている」――7月11日に発売されたロールプレイングゲーム(RPG)「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」(ドラクエ9)について、スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏は8月7日、このように述べ、中古品販売を抑えられたことが好調な売れ行きにつながっているとの見方を示した。
ドラクエ9は全世界累計出荷本数が5000万本を突破したドラゴンクエストシリーズの最新作で、これまでに350万本を出荷している。インターネットに接続して友人と遊んだり、新しい物語をダウンロードしたりできる点が特徴だ。
中古品が過去に比べて出回りにくい点について和田氏は、ゲーム設計がうまくできたためだと分析する。RPGは物語をクリアしてすぐ売ってしまうユーザーが多いというが、ドラクエ9ではゲームクリア後でないと遊べない物語を用意している。「(ゲームをクリアするという)シングルプレイが終わってから(複数人で遊ぶ)マルチプレイが面白くなるように作り込んでいる」
また、プレイステーション 2向けタイトルではユーザーのセーブデータを外部メモリに保存するようになっていたが、ドラクエ9ではソフト内にユーザーデータが保存されるため、ソフトを一度売ってしまうと遊べないようになっている。また、ユーザーデータも1つしか保存できず、1つのソフトを複数の人で遊ぶこともできないようになっている。
「中古品を売るなという話ではなく、ユーザーが長く遊べる設計にすることで、中古にまわらないようにしている」
現在の売れ行きは当初の予定通りといい、ユーザーがブログなどで話題にしていることにも手応えを感じているという。「ユーザー同士がすれ違うことで手に入る『まさゆき地図』という宝の地図がネット上で盛り上がっている。こういうことが起きるタイトルは順調に売れるので、売れ行きについては安心感を持って見ている」
和田氏は時期を明言しなかったものの、出荷本数500万本以上を狙うと話す。
「据え置き型タイトルは発売から2カ月で8割ほど売り切ってしまうため、初速のみが重要だが、ニンテンドーDS向けタイトルはそうでもない。このため、発売後1年間は新しいクエスト(物語)をインターネット配信するという工夫を加えた。また、広告も発売前、発売後1カ月、2カ月と分散するように計画している」とした。
また、ユーザーコミュニティを盛り上げるために、1000人以上とすれ違うと「良いことがおきる」など、さまざまな方策を今後も採っていくとした。
なお、海外展開については、ドラクエ9が受け入れられる市場を見極めて投入したいと語る。「日本はすき間時間にプレイするので、マルチプレイでも非同期プレイをどう使うかが鍵になるが、例えば米国ではユーザーが集まって自分の家でやる。ゲームの中身をあまり変えなくてもいいように、生活習慣の近い地域で展開したい」とのこと。このため、売り上げについては日本市場が中心になる見込みとのことだ。
なお、スクウェア・エニックスは同日、2010年第1四半期(4〜6月)の連結決算を発表している。売上高は前年同月比1.2%減の293億9900万円、営業利益は同82.8%減の5億9400万円、経常利益は同66.3%減の15億2900万円。純損失として16億7200万円を計上している。
和田氏によると、ドラクエ9の発売が当初予定から延期されたため、「第1四半期は赤字になるかと思っていたが、ゲーム事業以外の部門が思いのほか好調だった」とのこと。コミックスなどの出版事業やモバイルコンテンツ事業などが堅調だった。ゲーム事業は主なソフトの発売がなく、開発費やドラクエ9の広告費などがかさんだ模様だ。純損失は、英Eidosの連結子会社化に伴うのれん償却費などの影響によるものだ。
スクウェア・エニックスは今期より種類別セグメントを変更している。ゲーム事業に新たにオンラインゲームも含めるようにしたほか、これまで「AM等事業」としていたタイトーについても、一部をゲーム事業に組み込んでいる。
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