消費者保護に関する欧州委員会の新しい提案が法律化されれば、ソフトウェア企業は自社製品のセキュリティと有効性に責任を負うことになるかもしれない。
欧州委員会の委員であるViviane Reding氏とMeglena Kuneva氏は、物理的な製品に関する欧州連合(EU)の消費者保護を、ソフトウェアにも適用することを提案した。この法律改正案は、EUにおける各消費者保護規則の間に相違があることを知った委員らによってEU行動計画(アクションアジェンダ)の一環として提案された。
委員らによると、今回提案されているEUアクションの優先事項は、「消費者保護規則の原理を、ウイルス対策、ゲーム、その他のライセンス保護されたコンテンツを得るためにダウンロードされたソフトウェアのような製品のライセンス合意にも適用する」ことであるという。「ライセンスは、消費者に対し、商品購入時と同じ基本的権利を保証するべきである。つまり、適正な商業的条件で動作する製品を得る権利である」(同計画)
EU消費者委員であるKuneva氏は、ソフトウェアメーカー、そしてデジタルサービス提供企業がよりきちんと説明責任を負えば、消費者はより適切な選択ができるようになると述べた。
Kuneva氏は、「消費者にさまざまな選択肢を検討し、デジタルコミュニケーションの可能性を探求してもらいたければ、消費者の権利は保証されているという安心感を与える必要がある」と述べた。「つまり、主流の商品に対しては既に存在している高い水準と同等の消費者権利を明確に定義し、保証することが必要だ。インターネットはありとあらゆるものを消費者に提供することができる。しかし人々が安心していろいろな商品を検討できるようにするには、信頼を築く必要がある」(Kuneva氏)
Apple、IBM、Microsoftなどソフトウェアメーカーの権利を保護する団体であるBusiness Software Alliance(BSA)は、これらの提案を批判した。
BSAのパブリックポリシー担当ディレクターを務めるFrancisco Mingorance氏は現地時間5月7日、ZDNet UKに対し、「デジタルコンテンツは有形の商品ではなく、トースターと同じ責任規則を当てはめるわけにはいかない」と述べた。「有形商品とは異なり、デジタルコンテンツの作成者は、製品の予期される使用方法および潜在的性能を高い確率で予測することができない」(Mingorance氏)
Mingorance氏は、ソフトウェアの性能は、その動作環境、コードの更新状況、ソフトウェアの調整および変更が可能か否か、コードが攻撃を受けているかどうかに依存する、と述べた。
Mingorance氏によると、提案されている保護規則の拡大は、ベータ製品を含めた全てのソフトウェアを対象にし、プロプライエタリおよびオープンソースソフトウェアの両方に及ぶという。
現在、EU Sales and Guarantees Directive(消費者商品の売買及び品質保証に関するEU指令)の下、物理的な商品は2年間の保証期間が求められている。これらの条件をソフトウェアに拡大することで、契約条件は最低でも2年に延長しなくてはならなくなるため、消費者の選択肢を制限することになるだろうとMingorance氏は付け加えた。
Mingorance氏はまた、「範囲の拡大によって、企業はこうした契約向けに契約期間を越えたアップデートサービスの継続を余儀なくされ、最終的には提供の選択肢が制限されることになるだろう。これはまるで、夏に1カ月だけ家を貸し出したいのに、もう23カ月間賃貸を延長する義務を負うようなものだ」と述べた。
Mingorance氏はさらに、このソフトウェアに対する消費者保護規則の拡大は、ソフトウェア製品間の相互運用性の低下につながる可能性があると述べている。製造業者らが、サードパーティー開発者らのコードにアクセスできるレベルを制限する決断を下す可能性があるためだ。
ソフトウェア企業は、コードのセキュリティと有効性に対する責任を受け入れることについて、長い間議論してきた。Linuxカーネルの開発者であるAlan Cox氏は2007年、英国の貴族院委員会で、プロプライエタリおよびオープンソース開発者の両方ともコードに対する責任を課されるべきではないと述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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