楽天が2月15日に発表した2007年12月期連結決算は、経常利益が前期比92%減の23億円と2期連続で経常減益だった。仮想モール事業や旅行仲介事業など主力のEC関連事業は好調を維持して増収だったが、金融関連事業の利息返還損失引当金の一括計上などで大幅減益となった。
会見に臨んだ同社会長兼社長の三木谷浩史氏は、懸案のTBS株式保有問題について「変わりない」と引き続き膠着状態であることを示し、楽天グループの今後については「ポータルよりWeb 2.0が重要」と改めてこれまでの成長戦略における柱だったポータル事業の見直しが必要であることを明らかにした。
売上高は前期比5%増の2139億円、営業利益は99%減の1億円。最終利益は持ち分法適用関連会社で中国の旅行サイト運営会社のシートリップ・ドットコムの株式売却により368億円だった。
三木谷氏は足を引っ張った証券事業について「国内株式以外で投資信託・外国株式など商品のバリエーション拡大などにより収益力向上を図る」と言及。クレジット事業は「実力ベースでは収益力は改善している」と自信を覗かせた。
動向が注視されているTBS株式の保有問題については「基本的方針に変わりはない。ネットとテレビの距離感が縮まってきており、我々が述べてきた仮説(ネットと放送の融合)が、実証されつつある。我々としては少し買い増せば(持株株比率は)20%を超える。やろうと思えばいつでもできるが、業績も好調なのでそれほど焦ってはいない」とした。
新規事業としてここ最近になって訴求している海外事業に関しては、5月に台湾に進出すると言及。そのほかの地域についても「矢継ぎ早に手を打っていく」とした。
EC事業の好調な伸び、足を引っ張っていた金融関連事業の再生のメド。また、積極的な海外進出計画など一見、今後の成長戦略に期待が持てそうだ。
ただ、気になるのはすべてのネット事業の基盤となるグループの成長戦略の柱。これまで、楽天はネット事業者の最終的な勝者はどれだけ集客力のある入り口を確保できるかという考えに基づき、最大手のポータルサイト運営企業になることを目指していた。TBS問題が象徴するように、当時のネットバブル相場をテコにどれだけ告知力のある既存メディアを手に入れ、これを軸に各ネット事業に総客を促すかという考え方だ。
しかし、TBS問題も進捗せず、軸となるポータル事業は鳴かず飛ばずで、さらに深刻なのはポータル戦略の概念を覆すかのようにWeb 2.0的なサービスの需要が盛り上がり、当時の楽天の戦略は時代遅れの様相を呈している。
三木谷氏も以前は「ポータルで(ヤフーを抜き)ナンバー1を目指す」と述べていたが、今回の会見の席ではポータル事業について「現在、再構築を行っている。今はWeb 2.0の世界で単一の入り口としてのポータルよりも、オープンでパーソナライズできるサービスが必要だ。我々もAPIの公開を行ってサービスのパーツ化を進めている。ネットサービスは単一企業がすべてを提供しなければならないという段階から、組み合わせて提供する段階へと変化している」としている。
ただ、Web 2.0を意識した戦略はすでに1年以上前から明言しており、すでにさまざまな手は打っている。その上での「ポータル事業の再構築」はもちろん、TBS問題も先行きが見えない。
こうした中、成長性を訴求する新規事業として海外展開を打ち出しているが、この成否はともかく、肝心の国内展開における今後の具体的な成長戦略はWeb 2.0的な取り組み以外には提示されていない。今後も引き続き、国内の主力事業や海外展開の動向はもちろん、国内でいかに楽天の強みをいかし、新たな取り組みにおける具体的な成果を出せるか否かが注視される。
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