YouTubeに続く、「56.com」「Ustream」が見据える動画ビジネス新潮流

島田昇(編集部)2007年11月22日 03時19分

 YouTubeの次に来る動画ビジネスのトレンドは何か--。

 「Infinity Ventures Summit(IVS) 2007 Fall」初日の第2セッションAでは、世界の視点で動画配信ビジネス新潮流についてスポットを当てた。

 「New Media Ventures -中国動画投稿・共有サービスの雄『56.com』と Live Broadcasting『Ustream』」 と題し、56.com社長兼最高財務責任者のJay Chang氏、Ustream.TVの創業者であるJohn Ham氏が登壇し、両社のサービス概況と動画配信ビジネスにおける今後の課題などについて議論した。モデレーターはAdobe SystemsのDirector of Investmentsである田中章雄氏が務めた。

 中国の次世代YouTubeと呼ばれる「56.com」。2005年4月に会社を設立して始めた動画サービスは現在、1日に6000万本の動画が見られており、6〜10万本の動画、写真を組み合わせスライドショーが20万本、200〜400万枚の写真が投稿されている。

 Googleへの出資で有名な米ベンチャーキャピタルであるセコイアキャピタルなども出資しており、中国サイトのネット視聴率ランキングで唯一、未上場企業でのトップ10入りをしている。

 中国の広告市場は特殊な環境にある。中国の若年層はテレビをあまり見ない傾向にあり、80%程度がネットを最も重要なメディアであると考えている状況で、日本のようにテレビメディアが極端に存在感があり、著作権という既得権益の存在感が薄いため、動画ビジネスを手がける業界全体が思い切ったネットへのシフトを実現できているという。

 そのため、テレビ大手とのネット連携やUGC(CGM)アライアンスによるセミプロの支援、カラオケを歌っている風景など個人撮影した動画など、ほぼすべての動画コンテンツホルダーが参加する状況となっているという。

画像の説明 Ustream.TVの創業者であるJohn Ham氏

 YouTubeの次は何が来るのかーー。この問いの回答であるとするサービスを展開しているのが、動画のリアルタイム配信を支援するUstream.TV。

 高速ネット接続の普及、配信コストの低下、Webカメラの普及などを背景とし、2007年3月にベータ版をリリース。現在、10万人が映像を配信し、300くらいの最新映像が毎日流れている状況だ。

 ライブ感からは新しい体験が生まれてくるとの考えでこれまで、著名人によるファンとのコミュニケーション、政治家のメッセージ発進補完、子供が生まれた時など貴重な一瞬をリアルタイムで伝達するーーなどの活用がなされてきた。

 今後はライブ映像の活用に興味があるパートナーを募り、成長戦略を練り上げていく方針。すでに「Bebo」と「Meebo」などのWeb 2.0系企業と組んでおり、今後はMySpaceやFacebookなどにも働きかけていく計画だ。

 2社への質問として、ユーザーにCGMを作ってもらうためのポイントを聞くと、「コンテンツを出す人は見てもらわないと満足しない。視聴と投稿のバランスが必要」(Jay氏)とした。CGMを普及させる上での障害については、Jay氏が「中国は政治的な微妙な話題やアダルト、暴力は禁じられているのでサーチやコミュニティ、自動と有人での監視体制を敷いている」とし、John氏は「規約に基づきアダルトなどは禁止している。しかし、ライブストリーミングでは課題もあり、有人で特にトップページの監視に注力している」と答えた。

 収益化への課題については、Jay氏が「ウェブ広告、ユーザー課金、サーチ広告の3つを考えている。また、人が集まるところには広告も集まるもので、さまざまな収益モデルを構築する可能性を秘めている。さらに、数千万人のユーザー動向も追っているので、行動ターゲティング広告なども可能」とし、John氏は「ウェブの中で一番価値が高いのはライブ。その広告は最も商品的な価値も高い」とした。

 会場からはUstream.TVに対して「YouTubeがライブ動画を始めたらどうなるか」との質問も出て、John氏は「YouTubeはライブ動画にすぐ入ってこないだろう。既存の録画型とパートナー的な役割で延ばしていく」と回答した。

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