渡邉氏は、社員の子どもに対する取り組みというのは、企業が次世代の育成を考えているかどうかを示していると話す。「次世代は社会全体が育てていかないといけないんです。この点で企業は社内制度を整えたり、次世代向けの商品やサービスを提供するなどしてメッセージを世の中に示す必要があります。『次世代に何か示さないとあなたの会社は50年持ちませんよ』というと企業のトップにも理解してもらえることが多いですね」(渡邉氏)
企業を変えていくには、経営層の理解が欠かせない。しかし渡邉氏によれば、特に大企業の経営層の世代は、妻に子育てを任せていて、育児の現場をみていない人がほとんどだという。「だから、『放っておけば誰かがやってくれるだろう』と思っているきらいがあるが、そんなわけはない」(渡邉氏)
では、どのように経営層を説得していけばいいのか。渡邉氏は、「一番いいのは世代交代を待つこと」と手厳しい。「人はそう簡単には変わらない。変わらないのであればそのままで、(制度を整えたほうが)オトクと思ってもらうのが最善です」
具体的には、「子どもをもった女性を取締役を迎えるだけで、非常に先進的な会社だというイメージを持つことができます。逆に、そういうことをしないと新しい考えをもった新進企業にやられてしまう」(渡邉氏)といったように企業にとってのメリットを訴えることが秘訣のようだ。
少子化がすすんでいることもあり、厚生労働省も企業の育児支援推進には熱心だ。2003年に公布された次世代育成支援対策推進法では、従業員の子育て支援のために行動計画を策定、実施し、一定の要件を満たす場合には厚生労働大臣の認定を受けられるとしており、「くるみん」という愛称の認定マークを設けている。
渡邉氏はこういった取り組みには一定の理解を示しつつも、「実感としては子どもが保育園から小学校低学年になる頃のほうが、非常にケアが必要になる」と指摘。その後は子育ての手間はかからなくなっても、反比例的に責任が大きくなっていくとして、「義務教育が終わるまでなど、長いスパンで見ないと制度が根付かず終わってしまう」と警告した。
また、企業の育児休業制度の多くは、一般社員が取得することを想定しており、役職にある人がどう取得するかというところまで目が向いていないと話す。自身が復職と同時に課長に就任した体験を持つことから、「キャリアアップの内容やタイミングをどう位置づけて社員をサポートしていくかを考えてほしい。育児と家庭だけでなく、キャリアとの両立も考える時期に来ている」(渡邉氏)とした。
RTCカンファレンスは月に1度開催されており、インターネットビジネス関連のトピックが多い。毎回100名程度の予約枠が数日で埋まってしまうほどの人気ぶりだが、今回のテーマでは80人の枠のうち、実際に参加したのは50人程度。雇用者だけでなく働く側の意識の低さも、育児と仕事のより良いバランスを実現していく上での課題と言えそうだ。
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