あなたの会社で、最近子どもが生まれた人はいないだろうか。もしいた場合、その人は出産育児休暇が取れただろうか?その人は何年間も休むことができただろうか?そのとき、上司や周りの人たちはいやな顔をしなかっただろうか?そして問題なく、それまでと同じように仕事に復帰できただろうか?――これらの問いにもし「NO」と答えるなら、あなたの会社は次世代の育成に対して真剣に取り組んでいない可能性がある。
6月27日に東京都内で開催されたイベント「RTCカンファレンス」では、育児と仕事の両立をテーマに議論が交わされた。子どもを持つビジネスパーソンが働きやすい環境を作るにはどうしたらいいのか、具体的にはどのように出産育児休暇を取得するかについて、企業の環境整備のあり方が大きな焦点となった。
RTCカンファレンスはマイネット・ジャパン代表取締役社長の上原仁氏と、ワクワク経済研究所代表の保田隆明氏が主催している。24回目となる今回は、ベネッセコーポレーションで初めて男性として育児休暇を取得した、首都圏教育事業部マナビジョン開発課の白川隆朋氏と、NTT東日本やNTTレゾナントで出産育児休暇を取得し、現在はコンサルタントとして独立したコドモット代表取締役の渡邉純子氏がゲストで登場。実体験をもとにした具体的な話が数多く飛び出した。
ベネッセは子ども向けの教材などを取り扱う出版社だが、男性が育児休暇を取得できるようになったのは2005年という。2006年12月には、最大2週間の育児休暇が有給として認められ、取得しても査定に響かなくなりボーナスも支給されるようになった。2006年12月に第1子が生まれた白川氏はこの制度改正をきっかけに育児休暇を取得し、1カ月の休暇を取ったという。
ただし、取得は決して簡単なものではなかったようだ。仕事を休んでしまう分、その調整に多くの労力が必要となった。白川氏の場合、岡山本社と東京本部を橋渡しするような仕事であったためにほかの人と代わることができず、仕事を前倒し、もしくは先に延ばしてもらう形で調整したという。
「生まれる2カ月くらい前から、『もうすぐ生まれるんですよ』という話をあっけらかんとした感じで話して、『実は・・・』と育児休暇を取ることを切り出しました。休む前は寝る時間を使って仕事をしていたので、休む1カ月くらい前は必死でしたね。引継ぎはないので会議を前倒しにしてもらうか、『戻ってきたら決めるから』といって待ってもらいました」(白川氏)。いかに根回しをして、周りの理解と協力を得るかが鍵だとのことだ。
ただし、この調整方法は1カ月程度の休暇だから実現したとも言える。白川氏も「1年は休めないというあきらめがそもそもありました。もし1年休もうとしたら、仕事自体を変えてもらうしかなかったと思います」と認める。白川氏のほかにも2006年度には5人の男性が育児休暇を取ったが、いずれも2週間から1カ月程度の休暇だったとのことだ。
社内のイントラネットに、男性で育児休暇を取った第1号と紹介されたこともあり、社内ではいろいろ聞かれることも多いという。「みんな関心はあるけど、それまで聞けなかったようです」(白川氏)。
「人生で子どもと仕事のどっちが大事かといえば子ども。社内外でもっと、育児に関する情報交換や事例紹介をすればいい。一般社員から経営層までの意識改革が必要だと思います」(白川氏)
もう1人のゲストである渡邉氏はNTTレゾナントで子ども向けポータルサイト「キッズgoo」の企画段階から携わり、月間ユニークユーザー数100万人、同ページビュー数1億PVに育てあげた立役者。自身は現在小学校2年生と保育園の2人の子どもを持っているといい、2007年5月に独立したばかりだ。現在は企業向けに子ども向けネットコンテンツやCSRなどのコンサルティングをしている。
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