イオンやセブン&アイ・ホールディングスなどの流通各社は、自社以外の電子マネーでも決済できる共通端末の導入を進めている。ソニーグループやNTTドコモが出資しているビットワレットの「Edy(エディ)」やJR東日本の「スイカ」など、電子マネーが花盛り。しかし、電子マネーを取り扱う店舗はそれぞれの電子マネーに対応した端末を設置するのはスペース的にも困難だった。流通各社の共通端末は、主要な電子マネーの一部にしか対応できないものの、その分だけは利用者の利便性が向上することになる。(財川典男)
4月27日に電子マネー「ワオン」の発行・サービスを開始したイオンは、サービス開始と同時にワオン、スイカ、関東私鉄の「パスモ」、NTTドコモと三井住友カードの「iD」の4種類の電子マネーを読み取れる共通端末を導入した。来年にかけてワオンが利用できる店舗を拡大していくが、どの店舗も4種類を利用できる。
イオンの藤井正紀電子マネー推進部部長は、「イオンを頻繁に利用する女性層にはワオンを持ってもらいたい。加えて、通勤でスイカを利用している男性会社員やおサイフケータイのiDをよく利用する若者層も来店してほしい」と、共通端末の狙いを語る。同社は共通端末のデータ処理部分にまだ余裕があるため、利用可能な電子マネーを数種類増やすことも検討しているという。
流通業界で初めて4月23日に「ナナコ」を発行したセブン&アイは、ナナコの利用店舗を今月28日から全国のセブン−イレブン(約1万1730店)に拡大する。現在はナナコだけの利用だが、導入端末は複数の電子マネーを読み取ることができ、今夏にはJCBの「クイックペイ」が利用できるようになる。さらに、秋以降はその他の電子マネーにも対応する計画だ。
ローソンはiDの利用が始まっているが、8月下旬にすべての店舗に共通端末を導入する。これにより、クイックペイやエディでも買い物ができるようになる。
このほか、ファミリーマートは、7月上旬からエディとiDを全国の店舗で利用可能にする。同社はスイカにも対応しているが、スイカは地域性が高いため「スイカだけは読み取り端末を別にする」(広報部)。スイカは現在1000店で利用でき、7月末には首都圏2600店に拡大する計画だ。
流通業界のほか、「エクスプレス」の名称で全国720店のセルフ式ガソリンスタンドを運営するエクソンモービルも2008年中にクイックペイ、iD、三菱UFJニコスの「ビザタッチ(スマートプラス)」の3種類の電子マネーに対応した共通端末を導入する。
導入の第1号店は東京都練馬区の「谷原SS(サービスステーション)」。電子マネーをかざすだけでガソリン、軽油、灯油の決済が瞬時にできる。同社は、決済中に携帯電話に着信があると静電気が発生して発火の危険があるため、セルフスタンドでの利用はカード式に限定。「おサイフケータイ」は給油所の店舗内でしか利用できない。
流通各社の共通端末は、複数の電子マネーが搭載できるおサイフケータイを利用した場合、タッチパネルなどで決済を行う電子マネーを指定するという作業が必要で、これでは決済スピードの速さが売りの電子マネーの利点が発揮できないとの声もある。主要な電子マネーが網羅されていないという課題を抱かえながら、流通各社の共通端末による顧客囲い込み競争の第1幕が本番を迎える。
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