米航空宇宙局(NASA)の冥王星探査機「New Horizons」が木星へのフライバイ(接近通過)に成功し、航行の継続に必要な速度アップを達成したとの発表があった。
米国時間2月28日正午ごろ、ジョンズホプキンズ大学応用物理研究所(メリーランド州ローレル)に設けられたNew Horizonsのミッションオペレーションセンターから、研究者のもとにフライバイ成功を確認したとの情報が届いたと、NASAは伝えている。
同ミッションの主任科学者で、サウスウェスト研究所で宇宙科学・工学部門のエグゼクティブディレクターを務めるAlan Stern氏は「素晴らしい気分だ。何年もかけて計画してきたものが実を結ぶのを目にするのはうれしい」と語った。
New Horizonsは、フライバイ時に太陽系最大の惑星である木星の磁気圏が発する放射線にさられるため、その意味ではミッション中でも最も危険な区域を通過することになった。NASAによると、木星との最接近点への到達前、New Horizonsは管制センターとの交信を一時的に断ったという。その後、NASAは探査機との交信を回復し、最接近から約11時間後の午前11時55分に、New Horizonsの無事と現状を確認した。計画通り、木星から140万マイル(約225万km)にまで近づいたNew Horizonsは、木星の重力を利用し、さらに時速にして9000マイル(約1万4000km)加速し、冥王星へと向かった。冥王星への到達予定時期は、2015年7月とされている。
NASAが追加の画像を発表しない理由を説明する中で、Stern氏は「問題は起きていない。それは約束する」と語った。New Horizonsは「実によい成果」を入手しており、すべてが計画通りに進んでいるとするStern氏は、予定されていた700件にのぼる木星観測のほとんどはフライバイ前後の1週間に行われており、結果はまだ探査機に保存されていると説明した。
「New Horizonsが入手した、またはこれから入手するデータのうち、現時点で地球に送られてきたものは0.1%に満たない」(Stern氏)
残りデータの受信は3月7日に始まり、NASAはデータの受信を5月初旬まで継続する。4月下旬に記者会見が予定されており、New Horizonsが今回の木星探査で発見した成果については、その席でさらに詳しい説明がある見込みだ。
New Horizonsは絶えず地球と交信しているわけではない。また、研究者はいくつかのシフトに分かれており、探査機に保存されたデータが地球に転送される間にも週に2、3回は交代する。そのため、研究者が知りつつあることに興味を持っている人は多いものの、あれこれ推測するにはまだ早すぎるとStern氏は話している。
「イオ(木星の四大衛星の1つ)の最高の画像を入手している。またイオにあるTvashtar火山の柱状噴出、名前に反してそれほど小さくはない木星本体の(小)赤斑についても、これまでで最高の画像を入手している。しかし、本格的な分析はまだいっさい行っていない」(Stern氏)
「みんなが質問してくる。しかしそれは、わたしがまだ家の近所を運転しているのに、『デンバーからロサンゼルスまでの旅はどんな感じですか?』と尋ねるようなもだ」とStern氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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