Wind River Systemsが、Linuxディストリビューションを販売している小規模企業FSMLabsの技術資産を買収した。FSMLabsは、アニマトロニクスなどの極めて繊細で緻密なタイミング操作が必要な機械向けに特化したLinuxを開発している。
カリフォルニア州アラメダに拠点を置くWind Riverは、航空管制レーダーやレーザープリンタなどのコンピューティング機器を動かすための組み込み式OSを主に開発している。Wind RiverでLinuxプラットフォーム部門担当ディレクターを務めるGlenn Seiler氏によれば、FSMLabsの「RTLinux」は今後、Wind Riverの開発する主要OSである「Wind River Linux」および「VxWorks」に統合される予定だという。
RTLinuxは、VxWorksと通常のLinuxとの間をとった存在となる。VxWorksおよびRTLinuxは、「ハードリアルタイム」機能を特長としており、イベントに素早く反応して、緻密なタイミング操作が必要な処理を実行することができる。RTLinuxは、Linuxをプロセスとして実行するローレベルのリアルタイムOSを備えており、これを利用すれば、ユーザーは通常のLinuxアプリケーションに修正を施して、リアルタイム機能を利用可能になる。
Seiler氏は、「Linuxの取り扱いが増えるに従って、当社は、ハードリアルタイムへの対応に対する要望を多く受けるようになった。それは、従来の商業ベンダーによって現在提供されているソリューションでは満たすことができない」と述べ、「そこでわれわれは、これをLinuxに対する新たなビジネスチャンスの到来ととらえて、これをきっかけにLinuxが牽引力を発揮し始めているハードリアルタイム市場へ参入することを思いついた」と語った。
Seiler氏によれば、そうした市場の1つが携帯電話だという。現在の携帯電話には通常、2つのチップが搭載されている。1つは無線通信を処理するためのベースバンドプロセッサで、もう1つはユーザーがやり取りするソフトウェアを実行するためのアプリケーションプロセッサだ。ベースバンドプロセッサにはハードリアルタイムOSが必要であり、したがって、前述の2つの機能が1つのチップに統合された最新の携帯電話には、RTLinuxのような製品が非常に適しているとSeiler氏は述べる。
Wind Riverは、FSMLabsのソフトウェア、特許、商標、著作権およびドメイン名を買収した。また、Seiler氏によれば、同社は、ソフトウェアの開発およびサポート担当者としてFSMLabsから4人の従業員を雇い入れたという。ただし、その4人には、FSMLabsの創設者であるVictor Yodaiken氏は含まれていないようだ。Wind Riverは、取引の条件に関する詳細は明らかにしていない。
FSMLabsのソフトウェアを使用しているデバイスには、施設上部からケーブルで吊るして撮影を行うスポーツイベント用のカメラや、最近公開された映画「シャーロットのおくりもの」に登場したアニマトロニクス技術を使用したキャラクターなどがある。こうしたカメラに搭載されているモータは非常に精確にタイミングを合わせることが要求される。アニマトロニクスロボットは、不自然なしぐさを避け、サウンドトラックとうまく同期するには慎重な制御が必要になる。
Wind Riverが組み込み式Linuxに取り組んでいる唯一の企業というわけではない。Wind Riverと過去にパートナーだったこともあるRed Hatも、このところ組み込み式Linuxに興味を示していて、この分野のソフトウェア開発に資金を投じている。Red Hatで最高技術責任者(CTO)を務めるBrian Stevens氏は先週インタビューに応じ、同社は現在、プログラマーであるIngo Molnar氏の作業をサポートするチームを雇い入れている、と述べた。Molnar氏は、Linuxのレスポンスタイムを改善する取り組みを進めている。
Seiler氏は、「業界の誰もがリアルタイム性に対して興味をますます強めていることは間違いない」と述べる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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