ソーシャルメディアは儲かるのか?--モバイル展開も見据えた将来像を探る

島田昇(編集部)2006年12月21日 19時13分

 ソーシャルメディアがネット業界を席巻している。

 国内のトップランナー「mixi」を運営するミクシィは、すでに700万人弱が利用しており、2004年のサービス開始から急速な成長を遂げ、2006年には株式を公開。ヤフーに次ぐアクセス数をたたき出すモンスターサイトとなった。

 社会現象とも言える国内のmixiやブログのブーム化。海外では「YouTube」や「MySpace」の話題が尽きることはない。今やソーシャルメディアは、ネット業界を語る上で欠かせない存在として定着した。

 その一方で、ソーシャルメディアに共通するのは、明確な収益モデルが見い出せていないこと。国内では、モバイルを活用したソーシャルメディアの今後などについても注目が集まる。

画像の説明 グロービス・キャピタル・パートナーズのパートナーである小林雅氏

 11月に開催されたNew Industry Leaders Summit 2006 Fall(NILS)では、国内で有力ソーシャルメディアをプロデュースするサイバーエージェント社長の藤田晋氏、元ライブドア副社長でゼロスタートコミュニケーションズ専務の伊地知晋一氏、ミクシィ社長の笠原健治氏の3氏を招き、グロービス・キャピタル・パートナーズのパートナーである小林雅氏がモデレーターを務め、ソーシャルメディアの将来展望について議論した。

 現在、ネット広告代理店とECを屋台骨とするサイバーエージェントはブログ事業に全精力を傾けている。藤田氏は2006年から「アメーバブログ総合プロデューサー」の肩書きで「ここの表現を柔らかくしてくれ」「絵文字を入れろ」などかなりディテールにこだわって指示を出している。「精神的には10割。実際には8割ぐらいの時間を使っていますね」(藤田氏)。

 mixiでは厚い利用者層となる20代は300万人おり、国内の年代別人口で見ると20%程度が活用。今後さらに利用者数を拡大するには、ネットに不慣れなユーザーを取り込むことが重要で、「幅広いユーザーのサポートを強化するというのは当然やっていくべきことで、プロフィールの公開ステータスレベルを変更できるようにするなどの対応をしている」(笠原氏)。

 こうした利用者拡大を目指した経営資源の投入や使い勝手を向上させる一方で、いかに収益の伴うビジネスに転換していくのかという方向性が、大きな課題として浮上してきている。

画像の説明 ミクシィ社長の笠原健治氏

 伊地知氏はライブドア時代の経験を振り返り、「そろそろ利用者の数を伸ばすのはいいかなと。それよりもSNSやブログをインフラと捉え、その上に何を載せていくのかを考えないといけない」と指摘。ゼロスタートコミュニケーションで展開する「posh me!」は、SNS的な考えからコンテンツを創り出すという着想が原点となるサービスで、狙いは広告ビジネスにつなげることではない。そこに集まる人たちが新たな価値を持つコンテンツを創出することこそに、ビジネスを生み出すカギがあると想定している。

 「ライブドアを辞める直前にやった『livedoorネットアニメ』が意外にうまくいって人気も出た。これは完全に権利商売をやろうという狙いで、これからはこっちかなあと」(伊地知氏)。

 しかし、ビジネス化を最初から想定して作り込まれるソーシャルメディアの一方で、すでにサービスとして定着したソーシャルメディアをビジネスにつなげることは難しい。また、ビジネス視点よりも利用者視点に立ったサービスでなければ、そもそも大規模なサービスとして定着しづらいという問題もある。

 そのため、藤田氏と笠原氏は「現時点で決定打はない。ユーザーの属性に合わせた広告出稿を自動化すればものすごい収益が上がることは分かっているが、そこはまだ我々にとっては未知数」(藤田氏)、「基本はサービスありきで、サービスがブレイクすれば収益もブレイクする」(笠原氏)との認識で、明確な収益モデルを描けないでいるのが現状を示唆した。

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