“検索の巨人”を討てるか――中国が放つ「バーティカル」「モバイル」の刺客 - (page 2)

島田昇(編集部)2006年12月19日 21時41分

 次にプレゼンテーションしたのはYiCha Online Inc CEOのBin Liu氏。モバイル市場の概況とモバイル検索について解説した。

 Bin Liu氏によると、現在、ネット接続機能搭載型携帯電話の普及が高いためモバイル市場における成長の速度は日本より中国の方が早いが、市場の構図として日本と似ているという。つまり、「公式」と「非公式」とに通信事業者の“管轄内”と“管轄外”に大きく市場は分断されているというわけだ。

 例えば、大手携帯通信事業者の公式サイトに1億1000万人が訪れるのに対し、検索経由でネットを閲覧するユーザーはその3分の1以下の3400万人という状況。ただ、ユーザーからモバイルへの検索のニーズは増加傾向にあり、一般的な検索や生活に関連したレストランや写真などの検索にも活用され始めており、「モバイルの市場は巨大」との実感が日に日に増しているようだ。

画像の説明 YiCha Online Inc CEOのBin Liu氏

 これには、そもそもの人口と携帯電話利用者の圧倒的な数に大きく寄与している面も強い。中国では4億台のケータイが普及していて、そのうち1億台がネットに接続でき、1億人というPCのネットユーザーに拮抗している。しかも、携帯電話はその携帯性と即時性がPCよりもネット利用を大きく促進する可能性が考えられる。価格の面で見ても、PCでのADSLが100元なのに対し、携帯電話でのパケット通信定額制は20元となっている。

 そして同社が携帯電話利用者におけるネット利用で最大の着眼点は、個人情報に基づいた情報を提供できるということだ。具体的には、個人情報に基づいて推奨される検索結果や、過去の検索履歴を軸に検索結果を提案するというような手法となる。

 また、トップ50位のモバイルサイトの中で38社、さらに法人向けの2万サイトに検索情報を提供していることも同社の強み。これにより、Bin Liu氏は「中国のモバイル検索で50%以上のシェアは握っている」と認識している。

 現在、同社は中国におけるモバイル検索としては1位で、全モバイルサイトで見ても6位という位置付け。今月の中旬までに1日で710万クエリが検索されている。年末までに800万クエリまで伸び、2007年末までには第3世代携帯電話が普及する可能性なども勘案し、1日2000万クエリは見込めると見ている。

 中国のモバイル広告市場は2006年に日本円で10億円以上あるという。2010年では110億円になると言われており、Bin Liu氏は「予想より早いスピードで市場が立ち上がってくるかもしれない」との見方を示した。

 日本での展開については、「ローカルパートナーと組む形でアプローチできればいいと思っている」(Bin Liu氏)と言及している。

 ただ、これらについて田中氏は「中国はまだネット広告が発達していない。米国が約120億円、日本が約40億円なのに対し、中国は約8億円。ユーザー数の伸びに広告が追いついていないのが今の中国の現状」としており、利用者の伸びの一方で、検索に関する広告市場では多くの課題も残されている模様。中でも各方面から指摘されるGoogleの脅威に対する決定的な対抗策が見えないことは、依然として大きな課題として浮上し続けているようだ。

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