ある科学者グループによると、温室効果のある、大気中のメタン濃度が近年はほぼ横ばいであるという。これまで数十年間、大気中のメタン濃度は増加してきていた。
カリフォルニア大学アービン校の研究者グループと米国地球物理学連合(American Geophysical Union:AGU)によると、この展開は、地球温暖化を加速する要因の1つを人間が制御可能であることを示す、心強い兆候かもしれないという。
「排出量を本格的に制限すれば、大気中のメタンガス量は10年後、今日よりも少なくなっているかもしれない」とカリフォルニア大学アービン校のSherwood Rowland教授は米国時間11月20日付けの声明で述べている(Rowland教授はエアゾールスプレーに用いられるクロロフルオロカーボン--いわゆるフロン--がオゾン層を破壊する仕組みを解明し、1995年にノーベル賞を受賞している)。
天然ガスの主成分であるメタンは、18世紀後半に産業革命が起こって以来、地球温暖化に寄与する脅威と見なされてきた。産業革命以降、人々が化石燃料をさかんに採取するようになったことなどが、メタンの増加につながっていた。放牧や土地の埋め立ての影響もあり、当時と比べてメタンガス濃度は倍増している。排出されたメタンガスは温室効果をもたらし、大気の温度を上昇させるほか、スモッグを生成するオゾンの発生を助けている。
しかし科学者はメタンが二酸化炭素ほどの大きな脅威ではないとも考えている。二酸化炭素は、エネルギーや輸送用に化石燃料を燃焼させたときに発生し、温室効果も大きい。メタンは地球の大気圏に約8年間とどまるが、二酸化炭素は最高100年間残存する。
「現在も二酸化炭素の量が2000年と同程度であるならば、地球温暖化は(新聞のトップ記事を飾るほど)重大な問題として扱われなくなるだろう。しかしこの温室効果ガスの量を安定させるためには排出量を大幅に削減する必要がある」(Rowland教授)
Rowland研究室の科学者グループは、研究を実施するにあたり、小型の容器を利用して世界各地の海面上の空気を収集した。グループは各容器中のメタン量を測定し世界の平均値を算出した。
科学者らの観測によると、メタン濃度は1978年から1987年まで毎年1%以上ずつ増加し、合計11%増加したという。その後、わずかに減少する時期もあったが1990年代に入り、再び上昇に転じたという。山火事などの自然事象が、大気中におけるメタンガスの増加に影響したと科学者らは考えている。その後の1998年から2005年までは、メタンの量はほとんど横ばいであることを科学者らは発見した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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