ソニーは10月19日、2007年3月期連結業績見通しを下方修正した。修正後の売上高は、7月に発表した時点と同じ8兆2300億円と変わらない。だが、営業利益は500億円(7月発表時点では1300億円)、当期純利益は800億円(同1300億円)となっている(下表)。
ソニーが下方修正せざるを得なかった原因は大きく分けると2つある。1つが、現在問題となっているノートPC用バッテリの交換費用であり、もう1つがゲーム機事業での変更だ。
ノートPC用バッテリ問題についてソニーでは、PCメーカーからバッテリを回収するとともに、自主交換プログラムを展開している。これにかかわる費用として約510億円を引き当てている。
バッテリ問題以上に打撃となっているのがゲーム機事業だ。まず2006年11月に発売される「PLAYSTATION 3」(PS3)の実質値下げという価格変更によって営業利益が約160億円のマイナス要因となり、加えてPS3の仕様変更が約140億円のマイナス要因となっている。関連して、半導体などのPS3向けデバイスの生産調整による稼働率低下で、営業利益は330億円減少することになる。
さらにゲーム機事業では、携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」(PSP)関連ビジネスが当初計画を下回ることから、営業利益で約300億円の減益要因となっている。ゲーム機事業全体では、営業利益に約600億円のマイナスをもたらしていることになる。
実は、ノートPCやPS3向けデバイスを含むエレクトロニクス部門は、好景気と円安のおかげで、現実には当初計画を約540億円上回っているのである。しかし、こうしたエレクトロニクス部門の好調を、バッテリ問題の引き当てが打ち消し、さらにPS3向けデバイスの不調が追い打ちをかけた格好となり、エレクトロニクス部門の営業利益はマイナス300億円となってしまっている。
7月時点での見通し | 修正後の見通し | 7月時点比増減率 | |
---|---|---|---|
売上高および営業収入 | 82300 | 82300 | 変わらず |
営業利益 | 1300 | 500 | ▲62% |
うち構造改革費用 | 500 | 400 | ▲20% |
税引前利益 | 1500 | 700 | ▲53% |
持ち分法による投資利益(純額) | 400 | 400 | 変わらず |
当期純利益 | 1300 | 800 | ▲38% |
10月19日夕方に開かれた説明会の席上、執行役 EVP 兼 CFOの大根田伸行氏はゲーム機事業について「2008年3月期で必ず黒字になるとコミットできないが、努力する。2007年にはPS3がまとまって出荷されることから、コストダウンが可能だと見ている」と説明、ゲーム機事業の影響は一時的なものという見方をしている。
バッテリ問題では、東芝が損害賠償請求を検討していると言われているが、大根田氏は「東芝から、そういったことを考えているというメモはもらっているが、具体的な話はしていない」と語り、「裁判が起きるなどのリスクは業績に織り込んでいない」としている。
また、東芝以外からも損害賠償を求める話が出ているのかという質問に対して、ソニーのコーポレート・エグゼクティブ SVPの原直史氏は「確認していない」と返答するのみで、否定することはなかった。
バッテリの回収・交換費用で約510億円となっているが、当初ソニーは費用を「200億〜300億円になると見ている」と説明していた。大根田氏はその金額について「200億〜300億円になるとしていたのは、デルとアップルのための回収コストの額だ」と説明する。
「当初は回収のみを想定していたが、レノボ製PCが空港で発火したことを受けて、自主交換を決めた。加えて、対象となるバッテリが増えたことで、総額として約510億円という金額になっている」(大根田氏)
なお、この約510億円という金額には訴訟にかかる費用や逸失利益などは含まれていない。
バッテリ問題がソニー内部でどのような影響を及ぼすのかという点について、原氏は「現在は自主回収プログラムを遂行することが重要。関係者の処分は考えていない」と語っている。またバッテリ問題が、今後のバッテリの事業計画やPC「VAIO」の出荷計画に対して「最終的な影響がどうなるか、今の段階ではコメントできない」(大根田氏)としている。
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