デザイナーやアニメーターは、架空の世界を創造する前に、実世界についてもっと学ぶべきである。
これがWalt Disney Imagineeringのエグゼクティブデザイナー兼バイスプレジデントを務めるJoe Rohde氏からのメッセージである。Rohde氏は米国時間8月1日、コンピュータグラフィックス業界の主要カンファレンス「SIGGRAPH 2006」の基調講演で、デザイナーはキーボードやタブレットの前から離れ、人と対話し、自分の周囲にある実際の物をスケッチする時間が必要だと述べた。
Rohde氏は、Disneyのテーマパークで体験できる独自の「バーチャルリアリティ」は、ある技法を使ってこれまで制作されており、コンピュータグラフィックスアーティストもその技法を使うことで作品を向上できると述べた。
「われわれが合わせるのは、言葉ではなく、目にする物だ」とRohde氏は述べた。コンピュータグラフィックスアーティストは、自らを語り手とみなし、物語の構成を個別に理解しておく必要がある。その結果として、バーチャル世界の各オブジェクトが作品全体のテーマを伝えなければならない。また、観客は皆同じではないことも同氏は強調した。推測を楽しむ人ばかりでなく、テーマの明示が必要な人のことも考えて、デザイナーは制作する必要があるという。
Rohdes氏は、フロリダ州レイクブエナビスタにあるWalt Disney World Resort内の「Animal Kingdom」の設計と開発を監督している。同氏は、絶叫マシーンの「Expedition Everest」の設計を準備するにあたり、設計者と科学者のチームを、ヒマラヤについて研究させるために現地に送り込んだ。チームは動物の種類や植物を調査するとともに、周辺エリアの村々を訪れ、チベットやネパールの人々から話を聞いた。
Rohde氏は講演のなかで、作品のリアリティーを出す方法として、現在のグラフィックス技術と同じくらい、紙とペンが重要な役割を果たす場合があると強調した。同氏によると、かつては技術的な制約が建設的に働くこともあったという。これは、創造的かつ協力的になることを強いられるためで、その例として、中世の精巧な劇場を建築する場合を挙げた。「われわれは現在、創造力が向上しており、1人で小さな物を精巧に作ることができるようにはなった。しかし、大きな物を共同で作る能力を失いつつある」と同氏は述べた。
「スケッチは、全体的な体験を記憶する助けになる。スケッチにより記憶が鮮明になり、最終的なアートディレクションを決定する場合の助けになる」とRohde氏は述べる。共同作業や実世界での体験はリアリティーを与える。「物事がそのようになっている『理由』の理解を助けてくれる」(Rohde氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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