エモリー大学の科学者チームが、いずれ画期的なテーラーメード医療に結びつく可能性がある新しいタイプのヒト遺伝子マップを開発した。
ヒトゲノム計画(Human Genome Project)におけるヒトゲノムの解読が2003年に完了し、人がもつ遺伝情報のほとんどが同じ構成になっていることが分かっている。それによると、遺伝情報の99%は誰もが同じで、残る1%の違いが、外見や寿命、薬の効果、病気に対する抵抗力などの個体差を決定付けているとされている。
エモリー大学医学部の科学者らは米国時間8月10日、人間の遺伝子の配列に起きる40万件の挿入や欠失(INDEL)をマッピングした結果、残る1%の遺伝情報についてさらに詳しいことが分かったと発表している。自然発生的に出現する遺伝情報のバリエーションが40万件明らかにされたことにより、人間の個体差に関する研究がさらに進む可能性が出てきた。
エモリー大学の生物化学助教授で、今回の研究では7人の科学者で構成されるチームを率いたScott Devine氏は「遺伝的変異について研究すれば、人の将来の健康状態を予測できるようになる。遺伝子研究の目標はこれだ」と述べている。
「10年後には、自分が40歳頃に心臓病にかかる可能性が高いなどといったことが事前に分かるような世界が実現しているかもしれない。こうなれば、遺伝情報に応じて、医師が患者に合わせて治療法を変えられるようになる」と述べている。
数年前にHapMap Consortiumという国際研究チームが、SNP(Single Nucleotide Polymorphism:1塩基多型)を解析した最初のマップを作成している。
SNPとは、遺伝情報の塩基配列のうち、1カ所だけ他の人と違っているところのこと。塩基には、 アデニン(A)、 グアニン(G)、 シトシン(C)、 チミン(T)の4種類がある(人間のDNAには、人の場合、23対の染色体を構成している約30億塩基対の配列は、A、G、C、Tの組み合わせで構成され、鎖状につながっている)。SNPとは、A、T、C、GがA、A、C、Gになっているというように、配列が1カ所違っていることを指し、これが個体差を生じさせている)
対照的に、INDELとは何百もの構成要素が挿入されていたり、欠失していたりすることを指す。
Devine氏は、「ゲノムが説明書だとすると、SNPは説明の内容がスペルミスなどで1文字だけ違うような状態だ。一方のINDELの方は、単語や文章が追加されていたり、削除されていたりする状態だ」と語っている。
Devine氏のチームは、2年前に始まったこのプロジェクトで、36人の人間の遺伝子データをまとめたものからINDELを探し出すコンピュータベースのアルゴリズムを開発した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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