NEC、松下電器産業、パナソニック モバイルコミュニケーションズの3社は7月27日、携帯電話のプラットフォームを開発する合弁会社を10月上旬に設立することで合意した。共通のプラットフォームを採用することで開発コストの削減と期間の短縮化を図る狙いだ。
また、3社とNECエレクトロニクス、米Texas Instruments(TI)を合わせた5社は同日、第3世代以降の携帯電話の通信基盤を開発する新会社「アドコアテック」を8月に合弁で設立することも明らかにしている。
NEC、松下電器、パナソニック モバイルの3社が設立するのは、携帯電話端末に搭載するアプリケーションやミドルウェア、LSIなどを設計、開発する企業だ。出資総額は1億円で、NECとパナソニック モバイルがそれぞれ50%ずつを出資する。従業員は140名で、NECから社長を、パナソニック モバイルから副社長を迎える予定。社名は未定となっている。
NECと松下電器は2001年8月から携帯電話の開発において協業しており、Linux OSベースのミドルウェアプラットフォームを両社のNTTドコモ向け端末にそれぞれ搭載している。今回の合弁会社設立は、この協業関係をさらに進めたもので、松下電器の家電用LSI「UniPhier」を採用するなど、ハードウェアの部分まで共通化する考えだ。
今回の取り組みについて、NEC代表取締役執行役員社長の矢野薫氏は「HSDPAなどの3.5Gと呼ばれる通信方式が2006年夏にドコモから登場するなど、開発すべき領域がどんどん広がっており、1社だけで開発するには限界がある」と説明。新会社が設計や開発を一手に担うことで開発投資効率の向上を図る考えだ。パナソニック モバイル代表取締役社長の櫛木好明氏によれば、開発コストはこれまでの3分の2程度にまで減らせる見通しだという。
なお、NEC、パナソニックモバイルは、端末の商品企画や商品開発、資材調達、販売、製造についてはそれぞれで行う計画だ。端末の形状やユーザーインターフェースなどの部分で差別化を図るものとみられる。また、端末のブランドも、引き続き「NEC」「Panasonic」を使用する。
携帯電話端末の開発には多大なコストがかかることから、日本国内では再編の兆しが出てきている。カシオ計算機と日立製作所は2004年4月に携帯電話端末の開発から販売までを手がけるカシオ日立モバイルコミュニケーションズを共同で設立した。また、三洋電機とNokiaは携帯電話に関する新会社を共同で設立する計画を2006年2月に発表していたが、6月に計画を見送ることを決定していた。
一方、3社のほかにNECエレとTIが合弁で設立するアドコアテックは、通信回路の設計などを手がける企業だ。5社の出資総額は120億円で、出資比率はNECおよびNECエレが44%、松下電器およびパナソニック モバイルが44%、TIが12%となる。従業員は当初約180名で、パナソニック モバイルから社長を、NECから副社長を迎える予定となっている。
TIは参加する唯一の外国企業となるが、これはTIの持つGSMという通信規格のノウハウを取り入れるためだ。GSMは欧州などで普及している第2世代の通信方式。アドコアテックはGSMとW-CDMAの両方に対応する半導体の回路設計技術を開発し、TIやNECエレ、松下電器などに提供する。これにより、世界市場におけるW-CDMAプラットフォームの外販市場のうち、20%のシェアを2008年に獲得することを目指す。
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