米下院は米国時間6月8日、ネットの中立性の概念を否定した。同概念を支持するロビー活動を土壇場まで展開していたAmazon.com、eBay、Googleといったインターネット企業にとって、下院の否決は大きな痛手となった。
下院議員の大半が所属政党の方針通りの投票を行った結果、民主党の改正案は152対269で否決された。同案が可決されれば、ネットの中立性に関する厳格な規則が連邦法として法定化され、ブロードバンドサービスプロバイダーがインターネットサイトによって扱いを変えることが禁じられるはずだったが、結局、共和党下院議員の指導部が同案を否決するのに十分な票を集めた。
採決は、太平洋標準時間の午後6時半頃に行われた。採決に参加した421人の議員のうち、賛成票を投じた議員の大半は民主党議員で、反対票の大半は共和党議員の票だった。
同改正案(PDFファイル)の採決に先立ち、このテーマに関する議論がほぼ一日がかりで行われた。このネットの中立性の問題については、複数の主要民主党議員がいずれインターネットの歴史の転換点になると指摘していた。
同改正案の発案者であるEd Markey下院議員(マサチューセッツ州選出、共和党)は、「未来のSergey Brin(Googleの共同創設者)やMarc Andreessen(Netscapeの共同創設者)は(ブロードバンドプロバイダーに)税金を支払わなければならなくなる」と指摘し、さらに、今回の採決は「インターネットの未来」を変えることになると警告していた。
問題となっているのは、ある下院委員会が4月に可決した、通信の機会、促進、高度化法(Communications Opportunity, Promotion, and Enhancement Act of 2006:COPE)と呼ばれる法案だ。同法案を発案した共和党議員やVerizon、AT&Tといったブロードバンドプロバイダーは、同法案には消費者保護を目的としたネットの中立性に関する規定が十分盛り込まれており、これ以上規則を増やせば、米国の一般家庭により高速なインターネット接続を導入するための投資に支障を来たすことになる、と主張する。
全てのインターネットサイトを平等に扱わなくてはならない、というのがネットワークの中立性の一般的な意味だ。この概念に対しては、女優のAlyssa Milano氏やインターネットの技術的先駆者の1人であるVint Cerf氏など、多くの有名人が支持を表明している。また、同概念を支持するGoogleやYahooといった大手インターネット企業と、自分たちにとって不利な連邦法が新たに制定されることを懸念する電気通信企業との間で政治的対立も生じた。
法案番号 | 筆頭発起人 | 主な法案内容 | 現状 |
---|---|---|---|
S.2360 | Wyden(民主) | インターネットの二重構造化の阻止 | 上院の委員会で審議中 |
S.2917 | Snowe(共和)およびDorgan(民主) | インターネットの二重構造化の阻止 | 先ごろ提出 |
HR5417 | Sensenbrenner(共和)およびConyers(民主) | 独占禁止をネットの中立性に拡大 | 下院での採決待ち |
HR5273 | Markey(民主) | インターネットの二重構造化の阻止 | *下院の委員会で審議中 |
HR5252 | Barton(共和)およびRush(民主) | FCCに違反行為を取り締まる権限を与える | 下院で否決 |
S.2686 | Stevens(共和)およびInouye(民主) | FCCが調査、検討を行う | 6月に上院の委員会で採決が行われる予定 |
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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