サンディエゴ発--コンピュータはビデオゲームの創作や都市環境のシミュレーションには強力なツールである。しかし人間はマシンをコントロールし続け、結果が手に負えなくならないようにしなければならないと、テクノロジー哲学者のSheldon Brown氏は述べている。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のコンピューティング芸術研究センター長を務めるBrown氏は、学術研究者であるとともに産業コンサルタントでもある。同氏はアルゴリズムを使って創作されるコンテンツの力をデモンストレーションするプロジェクトの開発と監督に携わっている。しかし同時にBrown氏は、コンピュータが大切な詳細事項を見落とす可能性があることを主張するのも重要だと考えている。アルゴリズムを使った試みのうち問題が発生し得る例として、実世界での居住性を見送り、あるエリアに建物を最大限建てようとすることなどが挙げられる。
「何かが可能だからといって、それをしなければならないということはない」とBrown氏は言う。同氏の研究センターは、デジタル技術の発展により新しい芸術の形を創作することを目的としている。「ツールを構築するときには、これまで以上に深く広範にそのツールの役割を考える必要がある」(Brown氏)
このような問題が最も明白に見られるのは、Brown氏の「Scalable City」である。これはビデオゲームや都市計画といった分野の研究者がコンピュータを利用し、以前は多数のアニメーターやアーティストを必要としたであろう作業をオートメーション化するような方法を模索するために作られたソフトウェアアプリケーションの初期バージョンである。
Scalable Cityはコンピュータがいかにして、あらかじめ決められたアルゴリズムに従い、新しい都市あるいは郊外における環境のレイアウトを限られたスペース内にデザインできるかを示してくれる。このマルチメディアシステムは、Brown氏によるとフラクタルと類似しているという「L-curves」を利用し、迅速に荒れ地の風景をデジタル表示し、これを優雅にカーブした道路や新築の家屋が建ち並んだ街で埋め尽くすことができる。
空中写真のようなマクロ的観点からすると、このようなデザインは、与えられたスペースをできる限り効率的に利用したもののように見えると、Brown氏は述べる。
しかし、ミクロまたは地表レベルの観点からすると、これは、コンピュータシステムが人間に適した環境を理解できないことを示しているとBrown氏は警告する。Scalable Cityは、地域開発において、土地を最大限に活用することを狙って設計されたアルゴリズムを使っても、建物があまりに近接して建てられるため、実際には居住できないような図面が出来上がる場合もあることを示している。
細部にわたる調査をするより、高い視点から様子を俯瞰する方がどれだけ楽か分からないと、Brown氏自身も認める。しかし、コンピュータの利便性に心を奪われがちな人ほど、コンピュータを利用することの意義を考え、マシンにコントロールされないように警戒する必要があると、同氏はいう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス