加藤さこ
2006/05/18 22:31
今注目のベンチャー経営者や業界を後押しするキーパーソンが登場し、起業経験をはじめとした生の声を紹介するCNET Business Baseセミナー。4月24日に開催した第1回目のセミナーには、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の1つである「GREE」を運営するグリー代表取締役社長の田中良和氏が「ネットベンチャーの起業と成長戦略」について講演。自身の体験を交えながら、インターネットビジネスの今を語った。
セミナー第2部では、グリーに投資しているグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの小林雅氏が登場。田中氏を交えてトークセッションを行った。また、トークセッション後には、セミナー参加者による質問コーナーが設けられ、会場内は熱気に包まれた。
田中氏の講演では、グリーのサービスや組織について紹介され、起業までの経緯や会社の成長戦略についての詳細が語られた。GREEは、田中氏個人の趣味としてサービスを開始。まだ日本ではあまり例の少ないことだが、欧米では個人がサービスを作って法人化するのはよくあることだという。
「学生のころから趣味でホームページを作ってバナー広告を出したり、メーリングリストや掲示板の運営をしたりしてきました。GREEを始めた2年ほど前は、コミュニティサービスを趣味としてやるにはいいが、日本でブログやSNSが流行るかどうかはわからないという状況でした。自分の勤める会社でSNSを始めるには、会社側に収益性を説明しなければなりません。当時の私は、それが説明できなかった。が、必要とされている感覚はあった。それならば、とにかく形にしてみてから考えよう、というのがそもそもの始まりでした」
グリー代表取締役社長の田中良和氏
個人の趣味としてはじめたGREEは、公開してから10カ月ほどで10万人ほどのユーザーを獲得するに至った。それにともなって、問い合わせメールなども集中し、利用者に対する社会的責任も発生。次第に個人運営の限界を感じるようになったという。
「利用者から、『GREEは田中さんが主になってやっているそうですが、田中さんが死んだらどうなるんですか?』という縁起でもないメールを何通かもらいました(笑)。無料なんだから俺の勝手じゃないかと突っぱねることもできますが、世の中の人に求められているのなら、きちんとした受け皿を用意しなければという思いが強かった。これがGREEを法人にした経緯です」
GREEを法人化する際、田中氏が勤めていた楽天での経験も大きく影響した。田中氏にはもともと会社を作ってみたいという思いがあり、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏との関わりの中から学んだことが起業への出発点となった。
「私はまだ楽天が50人くらいの社員の規模だったときに入社しました。当時は三木谷さんと接する機会も多く、直接、話をしていく中で感じたのは、自分が将来、どうすべきかを考えたときに2つの選択があるということ。楽天の三木谷さんが凄い人だから彼に従って付いて行くのが1つ。もう1つは、三木谷さんが凄いから、自分も三木谷さんのようになれるように一歩一歩近づいていくこと。私は後者を選んだわけです」
田中氏は、楽天での地位を上り詰めるよりも、ゼロから何かを成し遂げたいという気持ちを強く持っていたという。ベンチャーを起業した大学時代からの知り合いなどの同年代の起業家と楽天での自分の立ち位置の違いを感じたことも、起業を後押しする要因となった。
「現在では世間によく知られている、はてな、ミクシィ、ドリコムなども、当時は始まったばかりの小さなベンチャーでした。名前も知られておらず、サービスもよく理解されていない。今のグリーのように、あの会社は大丈夫なのかというのが、その頃の世間一般の評価です。でも、成功するか失敗するかはわからないが、ゼロから何かを成し遂げた人への共感の方が私は強かった。大企業の中で地位を上り詰めようとしている人と、起業家として何かを成し遂げてきた人とは、善悪はないですが世界観が違います。その違いを感じたとき、自分がそもそもインターネット業界を仕事に選んだのは、大企業の中で成功するより、未知なる可能性に取り組んでみたいと思っていたことを思い出しました」
現在、グリーは社員21名、インターン11名ほどの人員で会社を運営している。経営陣のほとんどは20代後半と若く、社員の平均年齢は25歳。田中氏は、若い社員で会社が構成されているという点が多くのベンチャーの特徴となっているということを指摘した。
「三木谷さんがハーバードに留学したのが26歳、楽天の最年少創業メンバーで、現在取締役を務める小林(正忠)さんが楽天に参画したのが25歳。自分も25歳になって、何かやらなければという気持ちを持っていました。会社を作りたいと思っていたときに、趣味としてGREEというサービスを思いついて、実際に始めてみた。それが世間から求められているのなら、これを母体として起業という道を取るべきだと決心しました。他社のケースも見ていると、1つの成功パターンとして、インターネットを理解している23〜25歳くらいの若者を、20代後半の人間がマネージメントしていくという形態がベンチャーを成長させる鍵となっていると思います」
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